第7話
文は、この春に二十歳を迎える。
今年の四月から『十八歳で成人』と法律が変わった為、つまりは二十歳前で急遽成人となった。
けれど、たとえ文が二十歳だろうが十八だろうが、この童顔のせいで初対面の人からは未だ高校生に見られるという悩みは変わらない。
間違えられる度に名刺を取り出して立派に社会人だと自己紹介をするのがお決まりで、名刺を目にすると、みーんな驚いた顔をするというのもお決まりのパターンだった。
驚くのは文が学生ではないことに加えて、仕事柄『探偵』だからだ。
文がこの職に就いた理由は単純で、子どもの時に観ていた人気テレビアニメ『天才探偵・ピチ太郎』がきっかけだった。
主人公は天才とは程遠いポンコツな探偵だったが、物語はとても面白く、何だかんだで最終的に探偵が事件をズバッと解決するのだ。
その姿がかっこよくて夢中で楽しんだ文が、このアニメから大きく影響を受けたのは言うまでもない。
その後は探偵小説や映画などを通し、その気持ちは益々強まっていき、実際に文は夢を叶えてしまったというわけだ。
探偵という職業は目立たない上に時々胡散臭くみられてしまう事もあるが、文にとって探偵という仕事は胸を張れる仕事だった。
そんな探偵という職業は世間一般でも近年、需要の高まりと共にかなり認知され利用されてきている。
とはいえ成り手は一般職業に比べれば圧倒的に少なくて、そうなると調理や理容といった職種とは違い専門学校など無い。
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