第5話
山には積雪が残るが暦の上ではもう春で、三寒四温を繰り返し少しずつ暖かさを増している。
草花や小動物も目覚め春らしさを迎えているが、まだコートの必要な日も多々あって、先週は西日本一帯で積もる程に雪が降ったりもした。
普段降らない
しかも九州一帯でも雪が降り、そのため今年は近年稀にみる大雪だとニュースで今も繰り返し報道され異常気象だとされている。
原因は地球の温暖化だ何だとコメンテーターが解説していた。
そんなおかしな春だが、多くの人々が新生活を始める為、ここ東京へとやって来る毎年の様子に特に変わりはない。
そんな大勢の中の一人が文だった。
景色が街中へと入り高い建物が増えた頃、車内に案内が流れ、あと僅かで東京駅へ着くと知らせてきた。
「えっ、もう着くの?!ヤバイッ!」
それを聞いた文はのんびりから一転、大慌てで荷物を纏め始め、またしても隣から迷惑そうな視線を受けた。
そうこうしている内に新幹線は駅へと到着し、乗客が大荷物を抱えて一斉にゾロゾロと降りて行く。
なんとか荷物を纏めコートを羽織った文も大きく重たいスーツケースを引きながら降車する。
急ぎの乗客により後ろから早くしろ!という圧力を掛けられ慌てた結果、車両とホームの僅かな隙間にキャリーケースのキャスターを引っ掻け立ち往生。
その為、後ろで待っている中年男性に思いきり「チッ!」と舌打ちされてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます