第4話

「!!?」

 新幹線の暖かな空気と僅かな揺れにすっかり寝こけていた可愛宮えのみやかざりは、もう何回見たか分からない夢のラストを迎え唐突に目を覚ました。

 衝撃的な体験は今でも忘れられるはずもなく、かといって本当はあの経験も夢だったのではないかと時々疑ってしまうほどだ。

 この夢を見るといつも驚き体がビクッと動くので、案の定隣の席に座っていたサラリーマンに変な目で見られてしまった。

 なんともいえない恥ずかしさを誤魔化す為にペットボトルのお茶を飲む事にする。

 ――またあの夢見ちゃったな。でも夢じゃなかったんだよなぁ…アレ。

 小学生の頃の出来事だというのに、まるで今体験したばかりの様な感覚は、何度経験しても変わらず不思議な感覚だ。

 毎回この夢を見ると驚きはするものの慣れたもので、少しすれば動揺した気持ちを落ち着けることができた。

 ――いや。でも、もしかしたら本当は夢で自分が勝手に現実にあったことだって妄想してるだけかも?

「いや、ナイナイ」と一人言を言いながら顔の前で手を振って、益々隣のサラリーマンから距離を取られ『しまった』と反省する。

 ――もう考えるの止めよ。第一、それどころじゃないし。

 文は頭の中からその夢を無理矢理追い出すと気分転換に窓の外へと視線をやった。

 そこには綺麗な青い空が広がりタイミング良く日本一の山である富士山が見えた。

「あっ、富士山だ」

 ついまた一人言を言って、それからぼんやりと流れる景色を見つめ意識をそちらへ向けた。

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