新米探偵上京する
第3話
とても不可思議な夢は何故か妙に楽しかったり幸せだったりするのに、見たいと強く思っても二度と見られないことが多い。
そして目が覚めると楽しかった記憶はあるのに殆ど内容を覚えていなかったりする。
けれど何故か同じ夢を何度も繰り返し見ることもある。
――まただ。またこの夢だ。
今まさにそんな夢の途中だ。
でも決して見たいと思うわけではないのに、月に一度は必ず見る夢だった。
けれどこの夢は、夢であって夢ではない。
何故なら、小さいころ実際にあった出来事でもあるからだ。
――今でもあの時のことを覚えてる。はっきりと…。
夢の始まりは、決まってぼんやり自分と祖父の姿が浮かぶのだ。
「ほら、おじいちゃんの真似をしてごらん」と祖父がそう言いながら自身の合わせた両手の指を複雑に組んで見せる。
そう促されたものの、自分の小さな手では真似をして組むことは難しく「できないよ」と訴えれば「さすがに小さいけぇ難しいか」と祖父がおかしそうに優しく笑う。
それから「それじゃあ、おじいちゃんの手の真ん中から、向こうを見てごらん」と言って、何か呪文めいたものを小声で唱える。
――あ。そうだ。この後、アレが見えるんだ。
何度も繰り返し見たこの不可思議な夢の内容は全て覚えており、この後の出来事も勿論知っている。
知っているにも関わらず毎回ドキドキと心臓が高鳴ってしまうのは、あまりに衝撃が大きかったからだ。
「ほら、ここの間から…」
「うん」
そう再び祖父に促されると、戸惑いつつも手の中心に出来た穴にゆっくりと顔を近づけていった―…。
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