第2話

 その様子を祠の屋根の上から忌々いまいまし気に思う者が居た。

 長い足を組んで座りそれを見送った男は、溜め息をつくと不満そうに闇夜にも目立つ金色の瞳をスッと不機嫌そうに細めた。

「失敬な、何だあの態度は。稲荷いなりのひとつでも置いていけ」

 立派な犬歯を見せ唸り文句をたれると、フンッと鼻を鳴らす。

 それから視線を手にしているカップに戻しズルズルと麺を啜り、唇についた汁をペロリと舐めた。

 その男は恐ろしく整った顔をしており、それを彩るのは月の光に輝く雪の様な白髪。

 加えて頭には髪と同じ色の獣の耳、そして尻には四つの尻尾がついている。

 カップに入っていたげを口に入れ咀嚼そしゃくすれば、その尻尾は機嫌良さそうに動いた。

「ふぅ、やっぱり揚げは最高だな」

 そうして残りも全て食べ終えると、男は箸と共にカップをゴミ袋へ入れ傍らのペットボトルの緑茶を一気に飲み干した。

「あ~、うまかった!」

 満足気に息を吐くと、男はポケットから携帯を取り出した。

「ん…ちょうどいい時間だな」

 時間を確認すると携帯をポケットへ仕舞い、男は屋根から軽く飛び降りた。

 それからゴミ袋片手に不思議と誰も通らない路地を抜けると、喧騒に彩られた夜の街へと紛れたのだった。




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