第331話 誤算

摂津国大阪城

幕府管領上杉晴景より、5日以内に伊達晴宗が上洛しなければ奥州攻めとの言葉が発せられた。

つまり、奥州の各大名達に事実上5日後から奥州攻めをするとの宣言ななされたも同然であった。

その直後、伊達晴宗の重臣である中野宗時が大阪城にやってきたとの報告がもたらされる。

急ぎ領地に戻ろうとしていた奥州の各大名は、伊達家重臣である中野宗時の話を聞こうと大阪城に止まり、中野宗時がやってくるの待っていた。

大阪城広間に入ってきた中野宗時は驚く。

目の前に奥州の伊達家を除く全ての大名家の当主が揃っていた。

さらに、中野宗時を驚かせたのは伊達稙宗の姿があったことである。

伊達晴宗と共に騙し討ちにして全ての実権を奪い取り、丸森城に押し込め強制的に隠居させた伊達稙宗。

その伊達家前当主が目の前で不気味な笑みを見せている。

「こ・これは一体どうなっているのです。この大阪城に奥州の各大名家、そしてなぜ稙宗様がいるのです」

「何故いるのかだと!上様と幕府管領様よりお呼びがかかったからに決まっているだろう」

「稙宗様が上様と管領様よりお呼びがかかった・・・」

「何を呆けている。そもそも、奥州の各大名家の当主は上洛を命じられているであろう。そのついでに、暇を持て余しているこの爺いもついでに呼ばれたのだ。しかし、呆れたものだ」

「な・何を呆れると言われるか」

「この場に何故晴宗が来ない。他の奥州の者達は全て来ているぞ。上様と管領様は奥州の大名家当主に上洛を命じているはずだ」

「少々体調を崩されまして」

「ほ〜。家が潰れるかどうかの瀬戸際で余裕があるものだ」

「余裕があるなどとは」

「どうせ晴宗の考えることだ。守りを固め長期戦になれば他の大名達が反旗を翻すとでも考えているのだろう。今頃せっせと守りを固めている頃か。呆れるばかりだ。よくそれで当主が務まるものだ」

「な・何を言われます」

「お主はそのための時間稼ぎに来たのだろうが、既に遅い」

「遅いとは」

「先ほど事実上の奥州攻めが決まった。残された時間はあと5日だ」

「5日!」

伊達稙宗から5日と言われ驚愕する。

「5日後までに晴宗が上洛しなければ、幕府軍15万による奥州攻めが始まる。奥州の各大名家は幕府に従う。つまり孤立無援だ」

「そ・そんな・・管領様は、将軍様は」

この広間には、将軍足利義輝、幕府管領上杉晴景は既にいなかった。

そこに、三好長慶が現れた。

「三好長慶である。中野宗時殿。上様と管領様が呼んだのはお主ではない。早々に帰るがいい」

「お待ちください。5日後とは・・・」

「上様と管領様から上洛をせよと命じられたのは、伊達晴宗殿だ。お主では無い。伊達晴宗殿ではなく、お主が摂津国に入った時との報告が上様と管領様に届いた時に、お二人は奥州攻めを決断された」

「お待ちください。何卒、何卒、上様と管領様に御目通りをお願いいたします」

「既にお二人は十分に待たれたのだ。忍耐強く待たれたお二人の気持ちを無駄にしたのは誰だ。お前達であろう。あとは戦にて決着をつけるしかあるまい」

「そこを何卒、何卒・・」

「くどい」

三好長慶は振り返らずに広間を出ていった。

「稙宗様、お助けください」

中野宗時は伊達稙宗に縋り付く。

「もはや遅い」

「伊達家の命運がかかっているのです。お願いいたします」

「フン。いまさら伊達家の命運か、貴様からそのような言葉を聞くとは、あと打てる手は・・・」

「打てる手は・・・」

伊達稙宗は口元に笑みを浮かべる。

「お主が得意な裏切り。晴宗に謀反を唆したのはお主であろう。なら、その得意な口を使い同じ事をすればどうだ。簡単であろう。晴宗と二人で儂を騙したその得意な口を使えば簡単だ」

「な・何を言われる」

「幕府管領様は、お前達が考えているような甘い方ではないぞ」

「そのようなことは」

「晴宗ではなく、お主がここに来ている時点で既にダメであろう。幕府管領様は、義には義で答え、誠には誠で答え、敵対者には力で答える」

「そ・そこをなんとか・・・」

「遅いと言っている。早々に帰るがいいだろう。我らも国に戻り幕府と共に戦の準備がある」

奥州の大名達は一斉に立ち上がり広間を出ていった。

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