第297話 立花道雪
(※この頃は立花道雪ではなく
大友家の猛将立花道雪。
その猛将ぶりや有能さは既に京の都にまで聞こえてきていたほどの名将である。
そして、その立花道雪が持つ名刀は雷切。
立花道雪が持っていた刀で雷を切ったことから、その刀は雷切と呼ばれるようになったと言われている。
その雷が原因で両足が不自由になったとも言われ、戦場に輿に乗って赴くようになっていた。
輿に乗って戦場に赴くほど足が悪いにもかかわらず、立花道雪が現れたというだけで敵が戦意喪失すると言われている。
毛利との戦にいても自らの名を矢に書いたものを大量に用意して毛利の陣に打ち込み、立花道雪が来たことを知った毛利側の戦意が落ちたとも言われている。
立花道雪は、大友の軍勢による門司攻めには参加していなかったが、家臣たちに命じて敗れて戻ってきた者たちから、幕府軍の戦い方についてを聞き取りをしていた。
さらに幕府軍に加わっている大名についても情報を集めている。
自らの館にいると次々に家臣たちからの報告が入ってきた。
そこに
鎮連は、戸次家本家の嫡男ではあるが、子供のいない道雪の猶子となっていた。
養子のように完全な自分の子という訳ではないが一定の権利を持たせる猶子として、自らに万が一の場合が起きた時に備えていたのだ。
一人娘である
「叔父上」
「鎮連か、情報は集まったか」
「はっ、幕府側の大将は上杉景虎。東国の覇者であり、幕府管領上杉晴景殿の実弟であり、上杉家の後継者です」
「ほぉ!噂に聞く軍神毘沙門天殿であったか。神がかった戦いをすると噂の武将だな」
「地元の百姓たちを銭で雇い。雇った百姓たちを大友勢にぶつけてわざと負けさせる。それを三度行い大友勢が完全に油断したところを上杉本隊に狙われたそうです」
「なかなか巧妙だな。三度も敵が負ければ警戒すら行うことも無くなるか。殿の性格を考えるならば、そのようになってしまうか・・・折を見て殿にきつく言っておかねばならんな」
立花道雪は、大友義鎮に厳しいことが言える数少ない大友家家臣でり、道雪の正しいことは断固として曲げない厳しい言葉と姿勢には大友義鎮も従うのである。
戦った敵方武将からもその才と仁義の心を褒め称えられるほどの名将であった。
「さらに、大量の鉄砲に囲まれて散々に撃ちかけられ、そこに大砲まで撃ち込まれ軍勢が総崩れとなり、足軽が逃げ出し始めたそうです」
「なかなか厄介だな。大量の鉄砲となると迂闊に敵陣に近づけん。急ぎ竹束を作らせねばならんか」
「さらに続きがございます」
「上杉の鉄砲の威力で逃げ帰ったのではないか」
「大量の鉄砲を撃ち込まれた後、上杉景虎が自らの総大将としての名乗りを上げ、軍勢を率いて大友勢本陣に向けて自ら先陣を切って突撃。大友の者たちは皆その姿に恐怖を覚えたとのこと」
「何かの間違いではないか、総大将自ら先陣を切って敵陣に突撃だと、ありえんだろう」
立花道雪は、驚くと同時に間違いではないかと疑念を見せた。
「本当のことでございます。誰よりも先に先頭にたち、軍勢を率いて大友の軍勢の真ん中を突き進み、擦り傷一つ負わないその姿を見た大友の者達は、その時の上杉景虎をまるで鬼神のようであったと皆が言っております」
「戦場を駆け抜ける鬼神か・・その姿に皆が恐怖を覚えたというか」
「はい」
「殿も・・・」
「・・・そのようで・・」
鎮連の言葉に思わず渋い表情をする。
「まずいな。一度恐怖を覚えたら、それを拭い去るのは容易なことではない」
立花道雪はしばらく考え込む。
「鎮連」
「はっ」
「次は、儂が出よう。軍勢に関しては全て入れ替えろ。上杉に恐怖を覚えた兵では戦えぬ。それと鉄砲の玉を防ぐための竹束をできるだけ用意せよ。急げ、準備できしだい出陣する」
「承知しました」
戸次鎮連が他の家臣に指示を出している。
その様子を見ながら道雪は呟いていた。
「正面からまともにぶつかるのは下策だな。戦いを急がずに時間をかけて、上手く和睦に持ち込むことが上策か。可能なら上杉景虎と会談を持つか。会談で済ますことが最上の策。これ以上幕府と揉めれば朝敵・幕府御敵とされてしまうことになる。さてさて、上手く会談の場を作らねばならんな、如何するか」
「叔父上」
「なんだ鎮連」
「博多の商人を使われては如何でしょう。既に上杉にすり寄っていると噂が出ております」
「博多の商人を使い上杉と接触を持つ・・・使えるか・・博多の商人たちを使うか、奴らは早くも上杉にすり寄っているようだ。使えるな。よし、すぐさま博多の商人を使い上杉と話し合いの場を持てるようにせよ」
「承知いたしました。直ちに」
「急げよ」
「分かっております」
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