第293話 門司攻防戦(1)

上杉景虎率いる1万の軍勢が門司を制圧が完了して暫くすると海路使っての第二陣2万と毛利元就率いる毛利の第一陣2万が門司に上陸してきた。

上杉の船からは多くの物資が降ろされていく。

鉄砲、大砲、火薬、兵糧。

その様子を眺めていた景虎のもとに物見に出ていた家臣が戻ってきた。

「景虎様。戻りました」

「大友の様子はどうだ」

「村上水軍が豊後府内沖に現れたため、周辺の国衆に動員を掛け府内に集め、水際で防ごうと海沿いに兵を集めたようです」

「村上水軍は上手くやってくれたということだな」

「村上水軍は、2日間ほど沖合にとどまり兵を水際に足止めさせてから、こちらに向かったようです。その後、我らが門司を制圧したことが大友に伝わり、大友は慌てて軍勢をこちらに向かわせ始めました」

「2日間も足止めできたのは大きい。せっかくここにきてくれるのなら盛大にもてなしてやるか。大友が今後どう動くか掴めているか」

「大友家中の話では、門司を取り返した後はひたすら守りに徹して、朝廷の仲裁を待つ腹づもりのようです」

「我らに勝つつもりなら少々遅きに失したと言える。我らを打ち破るならば上陸する時を狙わねば勝ち目はないと思うが・・それでも戦う気概は誉めてやらねばならんか」

「おそらく、我らの鉄砲の数と運用を知らぬためかと思われます」

「それならば、仕方ないといえるか」

物見からの報告で、門司に向かって大友勢が動き出しているとの報告が入り、戦の準備が急ピッチで進んでいく。

景虎の指示で大友勢を迎え撃つための陣地の構築が始まっている。

二段構えの柵を作り、鉄砲と大砲の手入れを開始していた。

「こ・これは」

上杉勢が大量の鉄砲と大砲の準備を始めたところに出くわした毛利元就は、その数の多さに驚きを隠すことができなかった。

「毛利殿。如何された」

「景虎殿。この鉄砲と大砲の数はどれほどで」

「門司に持ち込んできた数は、鉄砲で2千挺、大砲で30門になる」

「2千挺!!!」

「2千挺など我らの持つ鉄砲のほんの一部」

上杉以外の大名家は鉄砲を手に入れるには、国友などの鉄砲鍛冶から買うしかない。

生産量が増えて値段が下がってきても高額であることに違いは無い。

しかも、使うには火薬と鉛の玉が必要。

戦に使うには恐ろしいほどの銭が飛んでいくことになり、まだまだ大量運用とはいかない大名が多い中、上杉家は自らの官営工房で直接生産。火薬も山中で極秘に大量生産している。

鉛は直江津からの航路で暹羅シャム(タイの国)で産出される鉛を大量に買い込んでいる。

また小規模ながら国内の鉛の鉱山を開発もしていた。

毛利元就は、これだけの鉄砲を揃え戦に運用できる上杉家の財力に驚き、直接上杉と戦わぬ判断は正しかったと実感していた。




大友勢は門司に向けて進軍を続けていた。

大友義鎮は自ら軍勢を率いて上杉とあたることにしていた。

「前方に敵らしき軍勢を発見」

物見からの報告に大友の軍勢に緊張感が漂う。

「数は」

「千名ほどと思われます」

「上杉の先遣隊か、蹴散らせ」

「はっ、承知しました」

大友義鎮の指示を受け、大友勢が千名の軍勢に襲い掛かる。

この千名はほとんどが銭で雇われた門司周辺の者達。

あっという間に蹴散らされ散り散りに逃げ出すことになった。

「わずか千名ではあるがまるで歯応えのない相手だ」

「上杉も大したことは無い。千名がこれでは本体も大したことは無いだろう」

そこに家臣からの報告が入った。

「この先に千名ほどの敵が潜んでおります。伏兵と思われます」

「伏兵だと」

「はっ、ですがあれではとても伏兵とは言えません。伏兵がいることが丸わかり。兵の質が悪すぎると言わざるおえません」

大友家の家臣達は呆れたように主君大友義鎮に報告をする。

「クククク・・・この程度か、早々に蹴散らしてこい」

大友勢が上杉の伏兵に攻め込むと兵達は武器を捨て一斉に逃げ出した。

伏兵のいた場所には多くの刀や弓矢・槍が無造作に放置されていた。

「噂とは当てにならんものだ。この様ではきっと上杉本体は単に数がいるだけの張り子の虎と同じ。よほど毛利の連中の方が歯ごたえがある」

「まさにその通りでございますな。我らの勝ちが見えたと言えましょう」

「一気に捻り潰してくれよう。ハハハハ・・・」

大友義鎮の笑い声が大友陣営に響き渡っていく。

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