第273話 乱世の原因と対策
乱世の始まり。それは足利将軍の跡目争位であった。
8代将軍足利義政の後継を誰にするのかが発端。
義政の弟の足利義視と,義政の息子の足利義尚のそれぞれに幕府有力大名がついて,10年もの戦いが始まる。
そして,それが全国に波及して乱世の世になっていく。
発端の戦いに加わった有力大名が,足利幕府管領職を経験した三家の細川家,斯波家,畠山家,そこに四職と呼ばれる侍所の山名家や赤松家などが争いに加わるのである。
もしも幕府三管四職が冷静になり争いに加わらず調停をしていたら,乱世では無く違う時代になっていたかもしれない。
次期将軍の決め方が,法で決まっていた訳では無いことがそもそもの発端だ。そこは京に戻ったら整備する必要があるだろう。
乱世の発端を作った大名達は見る影もないほどに力を落とし,ギリギリどうにか大名として生き残っているもの,大名としての力を失ったもの,様々であるが世の中を動かす力は既に失っている。
目の前には乱世の発端を作った大名の子孫である
「山名棟豊と申します。父である山名祐豊が病でもはや政ができぬため,父に代わり但馬山名家を継ぐこととなりました。幕府の沙汰に従い,今まで以上に将軍家への忠節に励みますので,何卒寛大なるお沙汰をお願いいたします」
「幕府に逆らい。惣無事令を無視。さらに幕府軍に戦いを仕掛ける。本来なら全ての領地を召し上げ,切腹を申し付けるべきところである。だが,罰すべき山名祐豊が病で隠居となったため,今回に限り特別に罪一等を減じ,山名家の存続は認める。但馬守護は山名棟豊として領地は但馬国のみ。因幡守護は山名豊定として領地は因幡国のみ。生野銀山とその一帯は幕府管理とする。今後幕府に弓引くときは,全てを失うことを覚悟せよ。そのときは情け容赦は一切無いぞ」
「寛大なるお沙汰をいただきありがとうございます」
山名棟豊は,両手を床について頭を下げて感謝の言葉を述べていた。
「今後,攻め込まれた場合以外の戦は,幕府の指示無く行うことを禁止とする」
「はっ,承知いたしました」
山名棟豊は幕府・将軍家への忠節を表明して帰っていった。
「晴景様,よろしかったのですか。山名の領地をもう少し減らしてもよろしかったのでは」
三好長慶は山名家への沙汰は,もう少し重くてもよかったのでは無いかと思っていた。
「今回に関しては嫡男に罪を背負わせるのは酷であろう。戦を禁止するための法が不足していることが遠因でもあり,今まで幕府の力が弱かったことも原因ではある。あまり欲張っても上手くいかないだろう。まだ,南海道(紀伊と四国)と西海道(九州)が残っていることもあり,潰しすぎるのも良く無い」
「今後を考えてのことですか」
「まあ,そういうことだ。この先の南海道・西海道平定について,一度京に戻り上様と今後のことで相談しなくてはならん。今回の西国の平定は,山陰道・山陽道を抑えたことで良しとする」
「承知いたしました」
「戻ったら法整備の提言と食糧の増産・商業政策についてやらねばならん」
「法整備と食糧・商業でございますか」
「将軍家の跡目の決め方を法で定めて,大名達の余計な介入をさせない。余計な騒動を起こさせない。法で定めて法に乗っ取り解決をさせるのだ。食糧は,新田開発と新たな作物の普及での増産体制の確立を図る。商業政策は産業の育成と交易による海外への金銀流失の防止だ」
「なるほど,将軍の後継は法で決めることにして大名達の介入を極力減らすですか。それと食糧増産と新田開発や産業育成は解りますが,交易での金銀流失防止とは一体」
「明や南蛮人から物を買えば金銀で支払う事になる。金銀は無限に湧いて出るわけは無い。明や南蛮人達に金銀で支払い続けていたら,国内から金銀が無くなっていく。それは,国が貧しくなって行くことを意味する。産業育成とも繋がっていくことだが,明や南蛮人から買っているものはできる限り国内で供給できれば,国内で銭が回ることになる」
「国内で銭を回すですか」
「生糸を上杉領内で生産と高品質化を進めている。明から生糸を買わずに済むようにして,南蛮人に我らの生糸を買わせるようにするつもりだ」
「生糸を上杉領内で作っているのですか」
三好長慶は生糸の生産を始めていると聞いて驚いていた。
「既に量産化を進めている。高級着物に使われ始めているぞ。さらに,白磁に似た陶磁器も作り売っているぞ。単に欲しいものを買ってばかりいたら貧しくなる。向こうが欲しいものを価値を高めて売れば大儲けだ。南蛮人に儲けさせる必要は無いだろう」
上杉晴景の商人顔負けの活動に只々驚く三好長慶であった。
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