第266話 思いもよらない来客
上杉晴景率いる幕府軍が赤松義祐と浦上政宗を倒し、宇野は戦わずに恭順を示してため早期に播磨制圧を終えていた。
そして上杉晴景は姫路城に入って播磨の今後の管理を赤松晴政らと協議していた。
そんな晴景の所にとんでもない客が訪ねてきた。
「毛利元就と申します。以後よろしくお見知り置きを」
大内家を滅ぼし、周防、長門、安芸、備後の支配者となった男。
そして、この乱世の世で指折りの謀略家。
「備前、備中は尼子が抑えている中でよく播磨に来られましたな」
「備前・備中の陸は一応尼子ですが、備前・備中の海は全て我らのものでございます」
「ほぉ〜中々優秀な水軍衆を抱えておられるようだ」
「いえいえ、東国の海を支配する幕府管領様の水軍に比べれば、吹けば飛ぶような小勢でございます」
大内家を下剋上で乗っ取った
「今日は姫路まで水軍衆で来られたということですな」
「はい、中々海の移動というのも良いものですな」
「噂に聞く、村上の水軍衆ですか」
「いやいや、噂などととんでもない。せいぜい周防から備前までの水軍でございます」
「それで、今日はいかなる要件で」
「我ら毛利は幕府とことを構えるつもりはございません」
「幕府に従うと」
上杉晴景の言葉に終始笑顔を見せている毛利元就。
「はい、ただ尼子とはいくつかの地を巡り取ったり取られたりを繰り返しております。そこに関しては領有を認めていただきたく」
「それは儂が出した惣無事令に反するのではないか」
「すぐにとは申しておりません。尼子がこのまま大人しくしているはずがございません。必ず動くと見ております。もしも尼子が幕府管領様と戦うことにれば、我らは必ず上杉様にお味方として尼子と戦いましょう。その時に我らに石見と備後を認めていただけたらと思っております」
「石見と備後か・・・一番欲しいのは石見銀山であろう」
毛利元就は少し驚いた顔をする。
「ハハハハ・・・流石でございますな」
「さらに尼子領内で毛利殿の手の者達が、何やら美作国などで村を襲っているとか」
「いやいやそのようなことは・・・」
「美作国で密かに上杉を名乗るもの達もいると聞くが、さらに毛利と幕府が手を組むと噂を流しているもの達がいるようだぞ。それをしているのは尼子に送り込んである座頭衆とやらか・・それとも鉢屋と名乗る毛利の手先か・・それとも世鬼とか名乗る忍びたちか。どの程度まで尼子に対しての策を仕込んでいるのだ。元就、欲をかきすぎれば身を滅ぼすぞ」
毛利元就の顔からは笑みが消えた。
「やれやれ、新しい幕府管領様は想像以上であったか」
「我らは本気で乱世を終わらせるつもりだ。盗って盗られてを繰り返す際限の無い乱世は終われせなければならん」
「本気でございますか・・・乱世を終わらせる」
「儂も上様も本気だ。それを邪魔だてするものは如何なる犠牲を払おうとも叩き潰すまでだ。それは大名達の大小は関係無い」
「如何なる犠牲を払おうともでございますか」
「儂が途中倒れようともだ」
「ハァ〜。儂はとんでもない御仁に出会ってしまったようだ」
「毛利はどうすのだ。永遠に乱世の世を望むのか。乱世の世が続けば、やがて毛利家が大内家のようになるかもしれんのだぞ」
「やったらやり返される。因果は巡るですか」
毛利元就はそう呟くとしばらく考えこむ。
「晴景様に申し上げたように、我らは幕府に逆らうつもりはございません。尼子と幕府が戦うなら幕府にお味方いたします。その時、恩賞を望んでいるだけでございます」
「石見銀山は望みすぎであろう」
「我らに石見銀山の管理を任せてもらえれば毎月の算出量の2割を幕府に献上いたします」
「話にならん」
「必ずやお役に立って見せます」
「・・・ならば、石見銀山で取れる銀の5割だ」
「承知いたしました。お約束いたします」
「いいだろう」
「晴景様はどこまで知っているのですか」
「尼子晴久の側で仕える角都なる座頭はお主の手の者であろう。さらに尼子の鉢屋衆を取り込むために毛利領内の同族を使ったであろう。世鬼と名乗る忍び達を使い、美作国で我らの仕業に見せかけた荒事を行ったで間違いなかろう」
「ハァ〜全てお見通しでございますか、本当に怖いお方だ」
「お主の策に乗せられた尼子は、美作国、備前国に兵を集めいつでも播磨に攻め込む準備ができているようだぞ。さらに敵対していた山名と手を組んだようだ。山名も同時に動いて来る」
「どうされるのです」
「既に六角家から1万が後詰めとして到着している。山名には丹波、丹後の国衆達を我が縁戚である一色家が大将としてまとめ、山名を牽制する」
「美作国と備前は如何されるので」
「奴らの進路で既に軍勢が準備をして待機している。ただ、尼子は雨が降る日に仕掛けて来るつもりのようだ」
「雨で鉄砲を使えなくさせるつもりですな」
「雨でも鉄砲は使えるぞ」
「えっ・・雨が降れば火縄が消えてしまいますぞ」
「しっかりと備えをしておけば、雨が降っても鉄砲は使える。多少の制約はあるがな。尼子は驚くことになる」
毛利元就はじっとりと嫌な汗をかいていた。
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