第261話 三木城攻防戦
東播磨を支配する別所就治の居城三木城。
交通の要衝である湯川街道沿いににあり、城の横を美囊川が流れている。
豊臣秀吉の三木城攻めが行われたのはここであり、三木の干し殺しと呼ばれた戦いの場所だ。
ここで秀吉により2年にもわたる三木城攻めが行われた。
秀吉が三木城を包囲したときは、山道や獣道を利用した毛利側からの兵糧の運び込みを断つことが出来なかったため、攻め落とすまでに2年もかかっていた。
また、宮ノ上要害や鷹尾山砦、野口城などの支城を持っていた。
上杉晴景は、豊臣秀吉に倣ってまず野口城を落とし、三木城の包囲を開始した。
秀吉が本陣を置いた平井山に自らも本陣を構え三木城を見下ろしていた。
「別所は籠ったままか」
「おそらく山名が来ると思っているのでしょう。いっその事こと、山名は我らの負けた救援には来ないと書いた矢文を大量に城内に打ち込みますか」
「長慶。それだけでは弱いな・・」
晴景が思案しているところに景虎が本陣に入ってきた。
「兄上、戻りました」
「おお〜景虎か、生野銀山を見事手に入れたようだな、ご苦労だった」
「歯応えの無い相手ばかり、生野銀山の兵達も戦わずに逃げてしまいました。生野銀山の守りに5千ほど残し戻ってきましたが、別所は籠ったままのようですな。一気に攻めないのですか」
「宇佐美定満に命じて地元の領民や猟師達を雇い、山道や獣道などを調べて、三木城の出入りできる道を全て塞ぐようにしているところだ。一つでも残せばそこから外部と連絡取ったり、兵糧を運び込んだりするからな」
「事前にかなり兵糧を運び込んだようですし、城内には多数の井戸があると聞いております」
「力攻めをするにも相手の心を折ってからかからぬと損害が大きいぞ」
「ならば、これは如何でしょう」
景虎は、1枚の旗印を差し出してきた。その旗印には山名家の家紋【五七桐七葉根笹】が描かれていた。
「山名の旗印です。山名の兵たちの忘れ物を多数拾いましたから、使えると思い全て持ち帰りました」
「なるほど、これは使えるな」
「もし、足りぬなら同じ物を作れば良いかと」
晴景と景虎の2人は山名の旗印を見て笑みを浮かべている。
笑みを浮かべている2人を見て困惑気味の三好長慶。
「長慶」
「はっ」
「この旗印を使い、山名が我らに協力して三木城包囲に加わっているように見せよ。できるだけ三木城の本丸から見える場所がいいだろう。旗印はよく見えるように掲げさせよ。それと、夜中に部隊を入れ替えて、山名が深夜に到着したように見せよ。さらに山名が景虎に敗北して、我らに従って三木城攻めに加わったと矢文に書いて大量に三木城にうちこめ」
「承知いたしました」
「孫一はいるか」
「はっ、ここに」
鈴木孫一が急いでやってくる。
「孫一。2日後より大砲と鉄砲で三木城に圧力をかける。まず、大手門周辺を大砲で徹底的破壊。その後足軽達で大手門周辺を占拠する。占拠完了後に本丸と本丸周辺にある三の丸・東の丸・新城に大砲を打ち込め。敵に休む時間を与えるな」
「はっ、承知いたしました」
「柿崎景家、三好実休」
「「ここに」」
「大砲による大手門周辺の砲撃が完了したら大手門を占拠せよ。抵抗が激しいなら抱え大筒と焙烙玉の使用を許可する」
「大手門より先は如何します」
「大砲による三の丸・東の丸・新城・本丸への攻撃が止んでからにせよ」
「「承知しました」」
上杉勢は上杉晴景の指示を受けて慌ただしく三木城攻めの準備に入った。
別所就治は三木城本丸から見える光景に驚いていた。
「どうなっている。なぜ、山名家が我らの包囲に加わっているのだ」
三木城を取り囲む上杉勢の中に、多数の山名家の旗印【五七桐七葉根笹】が見えていた。
「殿」
家臣達が駆け寄ってくる。
「このような矢文が多数城内にうちこまれています」
別所就治は矢文を手に取り目を通す。
「馬鹿な・・・山名が負けて、上杉に従っているだと・・・」
「父上、その矢文通りならば、山名が上杉の背後を突くことはもはや無いことになります」
安治の言葉に思わず渋い表情をする。
「城外との連絡路はどうなっている」
「誰も戻ってきておりません。獣道も含め、全ての道は塞がれたようです」
その時だった。
外から大きな爆発音が響くと同時に微かな衝撃。
慌てて外を見ると大手門が破壊されているのが見える。
最初の爆発音を合図に、次々に大手門周辺が大きな音を立てて破壊されていく。
吹き飛ぶ門と城壁。
立ち上る土煙。
吹き飛ぶ足軽を見て、逃げ惑う足軽や家臣達。
「父上、上杉の陣を・・・」
上杉の陣営から爆発音と同時に一瞬炎と煙が見えたと思ったら、大手門周辺で破壊音と土煙が上がる。
「あれはもしや、噂に聞く大砲というものでは」
「大砲だと・・・」
「鉄砲を巨大化させたもので、門を一撃で破壊すると伝え聞いております」
大手門周辺では、上杉勢はいないにもかかわらず次々に破壊されていく。
やがて、鬨の声を上げて上杉の軍勢が大手門に雪崩れ込んできた。
破壊された大手門を乗り越えて上杉勢が乗り込んで来る。
逃げ惑っていた足軽や家臣達には、戦う気力も残されておらず次々に打ち取られていく。
大手門を守る術は既に失われていた。
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