第169話 房総半島攻略戦‘’弐‘’
房総半島沖の制海権を上杉家が完全に握った上で、上陸地点の武田勢も完全に排除され、上総国の海岸に上杉景虎が降り立った。
「景虎様お待ちしておりました」
真田幸綱が出迎えた。
「海からの上陸戦など初めてであったであろう。ご苦労であった」
「鉄甲船からの大砲による砲撃でかなり楽に戦えました」
「兄上からは念のため、後詰めとして追加で1万の兵を送り込むとのことだ」
「既に、この近くの佐貫城へ攻略部隊は出ております。さほど時間はかからぬと思います。後詰めはこの周辺と佐貫城の守備にいたしましょう」
「そうなれば、かなり余裕を持った戦いができる」
海岸から少し入ったところにある本陣へと歩いて行く。
広い草むらに陣幕が張られ、周囲には多くの兵が警戒している。
本陣の中には既に今回の主な武将たちが待っていた。
景虎は、奥の空いている床几に座った。
「皆、大儀である。幸綱、状況を述べよ」
「ハッ、現在、武田晴信は久留里城、里見義堯は安房国岡本城におります。周辺の国衆ですが、まだ様子見といったところかと」
「真里谷武田信隆はどうだ」
「使者は出しておりますが、返答はまだでございます」
一人の若者が声を上げる。
「景虎様、よろしいでしょうか」
「氏親殿か思うことがあれば申してみよ」
北条家を継いだ現在の当主であり、若干13歳。北条新九郎氏親であった。
「真里谷武田信隆殿は、家督争いに敗れて北条家に身を寄せておりました。上総が乱れた折に上総に戻りましたが、勢力を拡大できずにいたところを武田晴信に利用されたのです。我らの説得であれば応じる可能性がございます。もし、応じないのであれば見せしめのために、真っ先に攻め潰すのも仕方ないものかと思われます。我らに従うなら武田攻めの先鋒を申しつければよろしいかと」
景虎はしばらく考えた後口を開く。
「いいだろう。北条に真里谷武田信隆の調略を申し付ける。ただし、真里谷武田信隆に与える猶予は2日である。それまでに返答ない場合は、覚悟せよと真里谷武田信隆に申し伝えよ。直ちに使者を送れ」
「ありがとうございます。それでは直ちに」
北条氏親の側近が下がっていった。
「久留里城を目指す。今度こそ武田晴信を逃すことなく討ち取らねばならん」
景虎の言葉に諸将は頷く。
「景虎様、武田はこの上総の地では囮を使い呼び込み、伏兵を用いて戦ったと聞き及んでおります」
「幸綱殿、武田は囮と伏兵を使うのか・・・ならば、通常よりも多くの物見を出して徹底的に調べる必要があるな」
「既に通常の倍以上の物見を放っております」
「ならば良い。だが、油断は禁物。我らは佐貫城に向けて進軍する。準備に入れ」
慌ただしく準備に入る上杉の軍勢であった。
安房国岡本城
里見家重臣正木時茂は、主であり里見家当主である里見義堯の元へと急いでいた。
急いだため、既に馬を2頭乗り潰してしまっていた。
城に着くなり、急いで里見義堯のいる部屋へと入った。
「時茂、そんなに慌ててどうしたのだ」
「上杉勢が海より上陸。佐貫城が上杉の手に落ちました」
「なんだと、早い・早すぎるぞ・・」
里見義堯はかなり険しい表情をしている。
「上杉の軍勢の数は」
「上杉景虎殿を総大将として約3万5千」
「3・・3万5千だと・・」
「さらに後詰めとして1万の軍勢が今上陸を開始しております」
「合わせて4万5千・・このために、我らの水軍を徹底的に叩いたのか、それだけ上杉は本気だということか」
本来であれば上陸前に水軍衆で徹底的に叩くのだが、自慢の里見水軍衆は上杉水軍により完全に壊滅させられていた。
生き残った水軍衆が鉄でできた船が攻めてきたとか、海の上で次々に巨大な水柱が起きて船が粉々になったとか、意味がわからんことを言っていた。
本当に鉄が海に浮くのか。
だが、水軍衆の生き残りは鉄の船と言っている。
実物を見なければ信じられん。
だが、もし事実なら。とんでもない相手だ。
「時茂。上杉の動きと国衆の動きはどうだ」
「真里谷武田信隆殿は、戦わずに上杉に降りました。北条家から戦って滅ぶか、上杉家の下で生き残っていくか決めろと言われ、その場で上杉家に従うことにしたそうです。真里谷の動きを見て周辺国衆も順次上杉側へ靡いております」
「上総は、衰えたと言っても真里谷の影響力は大きい。真里谷が上杉に降ればそうなるだろう。だが、全ての動きが早すぎる。考える暇もないほどに動いていく。上杉と北条の戦が終わり、北条が上杉の傘下になったばかりだろう」
「上杉の軍勢には、北条家も加わり北条氏親殿が北条勢を率いております。さらに今川家も水軍を使い上杉に手を貸しております」
正木時茂の言葉に里見義堯は暗澹たる思いを抱いていた。
「我らが勝てる方法が思いつかん。一つ二つの戦に勝つことはできても最後は押しつぶされて終わる姿しか思いつかん。だが、このまま簡単に従う訳には・・・」
「義堯様、里見の御家を存続させていくためにも、ここは武田とは縁を切り上杉家に降るべきかと思います。相手は我らより圧倒的な力を持っております。石高も比べることもできないほどの差がございます」
里見義堯はしばらく腕を組んで考え込んでいた。
その時であった。
城の海側で大きな爆発音がした。
慌てて外に出ると城門が破壊されている。
「何が起きた」
里見義堯は付近にいた家臣を捕まえる。
「海に鉄の船が・・・」
海を見ると鈍い光を放っている船が見える。
「本当に鉄でできているのか・・・」
鉄の船が火を吹いたようにえた。
城の周辺に大きな爆発がする。
それが数回繰り返されると船は武蔵国の方に戻っていった。
「時茂。・・分かった。残念だが、上杉に降ろう。上杉景虎殿に使者を出してくれ」
「承知しました」
決断を下した里見義堯の眉間には、深い皺が刻まれていた。
その時であった。
城の海側で大きな爆発音がした。
慌てて外に出ると城門が破壊されている。
「何が起きた」
里見義堯は付近にいた家臣を捕まえる。
「海に鉄の船が・・・」
海を見ると鈍い光を放っている船が見える。
「本当に鉄でできているのか・・・」
鉄の船が火を吹いたようにえた。
城の周辺に大きな爆発がする。
それが数回繰り返されると船は武蔵国の方に戻っていった。
「時茂。・・分かった。残念だが、上杉に降ろう。上杉景虎殿に使者を出してくれ」
「承知しました」
決断を下した里見義堯の眉間には、深い皺が刻まれていた。
その時であった。
城の海側で大きな爆発音がした。
慌てて外に出ると城門が破壊されている。
「何が起きた」
里見義堯は付近にいた家臣を捕まえる。
「海に鉄の船が・・・」
海を見ると鈍い光を放っている船が見える。
「本当に鉄でできているのか・・・」
鉄の船が火を吹いたようにえた。
城の周辺に大きな爆発がする。
それが数回繰り返されると船は武蔵国の方に戻っていった。
「時茂。・・分かった。残念だが、上杉に降ろう。上杉景虎殿に使者を出してくれ」
「承知しました」
決断を下した里見義堯の眉間には、深い皺が刻まれていた。
その時であった。
城の海側で大木爆発音がした。
慌てて外に出ると城門が破壊されている。
「何が起きた」
里見義堯は近くにいた家臣を捕まえる。
「海に鉄の船が・・・」
海を見ると鈍い光を放っている船が見える。
「本当に鉄でできているのか・・・」
鉄の船が火を吹いたように見えた。
城の周辺に大きな爆発音がする。
それが数回繰り返されると船は武蔵国の方に戻っていった。
「時茂。・・分かった。残念だが、上杉に降ろう。上杉景虎殿に使者を出してくれ」
「承知しました」
決断を下した里見義堯の眉間には、深い皺が刻まれていた。
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