第145話 厩橋城城代上杉景虎
北条との和睦が成立して全ての北条勢は上野国より撤退した。
上杉晴景、上杉景虎の両名は、北条勢が退去した平井城に入っていた。
北条側に討たれた国衆で領地を継ぐものがいな場所は直轄地とする。
越後上杉と北条が戦った時点で北条に味方して、戦が集結した後に我らに恭順してきた者は、領地を減らした上で恭順を認めることにした。
減らして取り上げた領地や逃げ出した国衆の領地は、当然全て直轄領である。
「兄上、いまの平井城のままでは、この先北条との争いが再燃した場合、守るには心許ないかと思います」
「確かに、大幅な手直しが必要であろう。武蔵国との国境より近い、ここは国境を守るための役目としておき、後方に上野国を治めるための城を築く必要がある」
「ならば、
「厩橋か、そうなると坂東太郎の異名を持つ関東屈指の暴れ川、利根川をしっかり抑えねばならんぞ」
厩橋は、本来なら‘’うまやばし‘’と読むが‘’う‘’が抜けて‘’まやばし‘’と読まれていた。
厩橋では、関東屈指の暴れ川である利根川が幾度となく氾濫を繰り返している。
利根川の氾濫で、利根川西にある石倉城が大きく破壊されていた。
「我らは越後の信濃川を治めております。その技術を使えば抑え込めるかと思います」
「厩橋のどの辺りにするか」
「それは、すでに下見をしてあります。利根川と広瀬川を外堀として使える場所が良いかと思います」
「早いな、ならば景虎。しばらくの間、厩橋城代として上野国を治めてみるか」
「エッ・・この景虎がですか」
「儂の跡を継ぐための訓練と思い2年程度好きなようにやってみろ。その後新たに城代を決めるなりすれば良い。どうだやってみるか」
「兄上、ぜひお願いします」
「越後領内では、大きな土木工事は少ない。手の空いた者達を城と利根川改修に使おう。それだけの者達が居れば、城を始めとした備えが出来上がらなくても、いざという時は対応ができるだろう」
「兄上、築城にあたり真田殿の力を借りたいのですが」
「分かった。幸綱殿に聞いてみよう。幸綱殿が難しいなら幸綱殿の身内で築城に詳しいものがいれば力を貸してもらえるようにしよう」
幸綱は確か子が生まれたばかり。その子が将来の真田昌幸だ。
流石に幸綱は難しいだろうから、弟達が来ることになるだろう。
越後領内から河川工事の技術者を集めた。
まずは、厩橋城を築城する周辺の土手の強化とかさ上げを行うことになる。
坂東太郎との異名を持つ暴れ川のため、河川幅を大きくとり東側の土手の大改修と厩橋城の築城を同時に行うことにする。
当然のように混凝土の大量導入になる。
そして、いつの間にか築城の縄張りを真田幸綱が指揮をとっている。
真田幸綱に宛てた書状で築城に詳しい者を送ってくれと書いた。
真田幸綱の弟達も領内の築城のため縄張りをしていると聞いていたのため、弟達を寄越すと思ったのだが、なぜか真田幸綱本人が来ている。
「晴景様、この厩橋城のことはお任せください。必ずや難攻不落の城にして見せましょう」
すでにやる気である。弟達に任せたらとはすでに言える雰囲気では無い。
「そ・・そうか、楽しみにしているぞ。この厩橋城は、関東における我らの中心となる城だ」
「お任せください。北条や関東諸将が驚くほどの城を作って見せましょう」
チラッと縄張りの図面を見たがかなりデカい城を作る気のようだ。
そういえば、大きさも何も言ってなかったな。
金と人足は心配するなとしか言わなかった。
今更か、後はなるようになるか。
越中の時と同じで田植えも終わった農民を大量に銭で雇っている。
農民達を銭で大量動員することで越後上杉家の‘’天下泰平‘’銭の浸透を図ることもできる。
さらに、越後から虎豹騎軍の予備部隊を大量動員している。
いつものように銭と人の物量作戦だ。
厩橋城築城現場は大混雑状態だ。
基礎がしっかり出来上がれば、後は早い。
別の場所では、築城の木材などを加工して、基礎が完成したら一気に組み立てることができるように準備している。
冬は雪の心配がないからかなりの速さで完成しそうだ。
北条や関東諸将・上野国衆の度肝を抜くようなことになりそうだ。
それはそれで面白そうだから、幸綱の好きにさせるとするか。
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