隊長としての覚悟・1

Sideライ



体調は回復し体もそこそこ動かせるようになった。そのため先の戦闘に対する報告をするよう軍務長からの命令で現在報告書を作成しているのだが……





「マズイなぁ……つい隙があると突撃した結果突破したのはいいものの、あの包囲戦仕掛けられたのはどうしようもない失態なんだよな」


「隊長って敵の動きに敏感だけど今回はかなり巧妙に隠されて動かれてたんで素直に書けばお咎め少なそうっすね!」


「そうだといいんだけど………隊長として考えるなら長く膠着状態だった戦線に穴開けられたとはいえ、すぐ突っ込むのは戦い方としては駄目だなって後々気づいたんだよなぁ……そこ突っつかれた何も言えない」


「さすがに戦術面で勝とうとするのは無理っすよ〜。魔物相手ならなんとかなりますけど相手は俺らより技術も戦術も上の奴らなんですし。ほんとよく生き残れたってその時救援に向かった部隊が言ってましたし他の基地でも語り草になってるんですよ〜」



「「「うんうん」」」



「そうかぁ……まぁ報告はきっちりこなさなきゃならないものだしな、皆ありがとう」


相手はバーテス、知略と兵器で長年対立しその身体能力の差を埋め少数で上回ってきた彼ら相手にむしろよく戦死者を出さなかった、と励ましてくれる部下に勇気を貰いありのままの報告を纏めていった。





「…………報告書を見て何が起こったのかはわかった。隊長になってまだ半年、しかも相手が悪すぎた。この内容ならお咎めもないだろう」


「ありがとうございます。」


「しかし、だ。気持ちは分からないでもないがお前は隊長だ。この突撃は到底見過ごすことはできない。見過ごしたら軍務長である私がお前を贔屓していると思われかねない」


「…………」


「祖国の勝利を願う気持ちは痛いほど分かる。しかし気持ちばかりが先行し思わぬ害を被ることは我々の慢心からくるものである。相手は自分たちも能力が高くない、接近戦に持ち込めれば勝てるとな。」


「……我々の歴史ですね」


「そう、歴史だ。歴史になるほど我らは自己を管理する能力に欠けているのだ。多少は改善され対策も練られてきた!それでも同じことは起きてしまう!!」


ダンッ!!と拳を机に振り下ろしその歴史を、バーテスには決して勝てないことに対する怒りを露わにした。


「コネクトについてもそうだ!威力、効力で考えるのなら我々は圧倒的にバーテスの黒蟻どもに勝っている!しかしコネクトは単調で広範囲を攻撃するものはあってもバーテスには要所を突き効率よく殺すコネクトが開発されている!」


バーテスの黒蟻。バーテス兵は皆黒い軍服を着るが故に付けられた蔑称。公では口にしてはならないレベルの言葉であるが今いる執務室には副官と軍務長、そして自分しかいないためつい言ってしまったのだろう。



「……すなない、熱くなりすぎてしまった。本題に入ろう」


「本題…ですか」


「ああ、君は隊長になってから半年が過ぎた。もっと言えば初めて失敗を経験した訳だ」


「……はい」


「君は失敗して今回運良く部隊に死者も出なかった。隊長としての能力はまだ物足りない部分はあるが今回の件はそれを持って余りある能力の証明となった。しかし能力だけでこの先生き残れるほど甘くは無い。」




「故に問おう。

隊長として今どのような覚悟を持っている?」



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鉄の心は誰が為に @gakuenkaraage

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