彼女は悩む
私たちは生まれてから5年で青年期まで成長し、残りの人生は戦争と新たな命を育むことに費やされる。それは敵国であるミラスラでも同じでありそこに差異はない。
…いや、差はあった。我らが祖国バーテスでは人を産む時の多くは1人や2人まで、稀に3人が同時に生まれることがあるが、ミラスラでは倍の数である4人や5人は最低でも生まれるそうだ。
バーテスはその差について調べ出た結論として体の強度がミラスラ人はバーテス人の3倍もあるからこそ可能となっている。そう結論付けた。
私たちは敵を知ることを欠かさない。だからこそ身体強度に差はあれど今まで対抗することができた。ミラスラ人は感情の起伏が激しく、だからこそ大規模なコネクトで戦況を覆されることも多かった。
私たちは大規模なコネクトを使える人間が少ない。研究ではコネクトの発動に必要なエネルギーの貯蓄が、私たちの身体では難しいという論が有力であるとされている。
……機械を操りミラスラと戦うバーテス、剣や弓など原始的な武器を使うミラスラ。緻密な策を弄し不利を有利に持っていくバーテス、軍務長の指示に忠実ではあるがさらなる戦果を求めることの多いミラスラ。
敵とはいえ話せば分かり合える者もいた。ただその敵もつい先日上層部によって殺されてしまったが。
殺さなければ殺される。今を、これからを生きるために技術を発展させ敵を殺す。
それがこの世界の絶対の共通認識。長く続いてきた戦争によって得た1つの真実。魔物は浄炎で葬る。ノームは殺してはならない。それと同等なものなのだ。だからこそ私は……
「ミアーナ!」
「っ!?」
「どうしたの?そんな気難しい顔しちゃって、今朝食べたボーアのハム美味しかったけど口には合わなかった感じ?」
「え?あぁ、ただの考え事。ハムは美味しかったよ。明日も美味しいもの期待してる」
「おお!任しといて!!」
「そうだ、食糧の備蓄に偏り…特に魚が足りなくなってきたから軍務長に食料調達の許可を貰ってきてくれない?」
「ここ最近芋と野菜ばっかで魚料理全然だったからね〜。ついでに狩りの許可も貰っちゃう?」
「漁と狩り両方出来るほど人がいれば良かったんだけどなぁ…………」
「でも備蓄する量増えるからやっぱり警戒とかもあるし今の104人が丁度いいよ」
「そうだね……とりあえず同時に漁と狩りはできないけど1日空けての申請でいけるはずだからラル、お願いしていい?」
「任された!!」
「任したよ、じゃあ仕事に戻るから」
「了解〜!あっそういえば、剛拳ライって実際に見てどうだった?やっぱ怖い顔してた?」
「あ〜……威圧感はあったけど優しそうな顔してた。予想してたより若くてこんなに若いのに戦場に多く出されてるのかぁ…、って少し同情もしちゃったけどね」
「そっかぁ……早くバーテスを落としてそういった子を助けてあげないとね」
「うん……そうだね」
「あっ、でも敵として会ったなら殺さなきゃ駄目だよ!!じゃなきゃこっちが殺されちゃうからね!!」
…………300年ほど前から、私たちは殺し合いをしてきた。200年前から魔物が現れ倒すと土地を汚染していった。魔物が現れた時だけは休戦して共闘する。そんな関係が続き、信頼関係が築かれ休戦状態になりもした。ただ今の状態から見てわかる通り何かが原因でまた争い始めたけど。止まれないことは明白、だから敵国を倒しこの戦争を終わらせることが唯一の方法だと信じて。
…………本当にそうなのだろうか。昔駄目だったからと言って、今やってみればあっさり解決したりすることもある。でも誰もしようとしない。何故なんだろう……
考えてみたが、纏まらなかったため仕事に専念することにした。
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