3日目:守りを捨てた女武人

 昨日、私は巨人の両足を切り落とした。巨人は胴体を引きずりながらトンネルの奥に逃げていった。かなり動きが鈍くなっている。あれなら次の戦いでトドメを刺せるだろう。

 一方、島内では失われた地域も増えた。右足町と左足町。この二つの町は廃墟となった。幸い両方の町で買える商品は、防具や装飾品がほとんど。私は防御を捨てたスピードタイプの剣士だ。余計な防具は必要ない。ゆえに、ここで両足を切り落とすのは妥当な判断といえよう。


 三日目。私は大量の金貨を手に、右手町へ向かった。できれば今日中に巨人を倒したい。だが、いくら巨人の背が低くなったとはいえ、短剣で頭を切り落とすのは難儀なんぎな作業だ。ここ右手町には武器を扱う店が多数ある。何かいい物はないか探してみよう。

 さまざまな剣、斧、ナイフ、昔の銃やボウガンなど。右手町ではあらゆる種類の暴力が手に入った。あまりの品揃えのよさに驚かされる。迷いに迷った末、私は手榴弾を三つ購入した。巨人がクチバシを開いた瞬間、中に放り込んで頭を吹き飛ばす作戦である。


 買い物が終わったので、次は腹を満たそうと御腹町を目指す。道すがら、私は昨日、門番の老人と交わした会話を思い返していた。

 老人はこの世界を『終わりなき島』と呼んでいた。ここの住民たちは、老いることも病気になることもないらしい。夢の楽園だと、かれはそう言っていた。たしかに全員がロボットならそれも納得だ。しかしただのロボットにしては、島の住民は人間味にあふれている。まるで魂でも宿っているかのような……。

 そんなことを考えながら御腹町に着いた。そして一軒のそば屋へ入ろうとしたとき、路地裏でゴミを漁っているホームレスの男を見かけた。ホームレスはなにやらブツブツとつぶやいていた。


「チキショウ、酒はどこだ。あれがねえと俺は……。ここは犬の糞だ。くそったれの夢の中だ。戦争はまだ終わっちゃいねえ。いまいましい■■■め。ふざけやがって……。オイ、何見てる! 俺を監視するのはやめろ! あっちへいけ!」


 私は男から目をそらすと、そば屋へ駆け込んだ。ホームレス役のロボット。なかなか凝った設定だ。一部、聞き取れない言葉があったのは気になるが……。

 しかし注文したそばが届くと、私はホームレスのことなどすぐに忘れた。今夜は最終決戦だ。しっかりと体力をつけて戦いに備えよう。巨人を倒して島を出ていく。それでこの悪夢は終わるのだ。

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