2日目:尻尾の代償
昨日、私は巨人と
私の背後で門が閉まる。それと同時にトンネルの奥から巨人が姿を現した。ひょろ長い手足と尻尾を持った巨人。身長はゆうに五メートルはある。鳥のような頭とクチバシ、血走った目がギラリと光り、私を値踏みする。全身を覆う羽毛には、ところどころで
予想はしていたが、思っていた以上に異様な風体である。人型の
巨人は、闘技場の中央で立ち止まるとそのまま動かなくなった。仕掛けるのはあくまで私の方から、ということか。いいだろう。では、その
私は二本の短剣を、逆手に構えて走り出した。巨人の目の前へと
私は攻撃を回避すると、巨人の
ついにその時がきた。尻尾がドサリと音を立てて地面に転がる。巨人は悲痛なうめき声を上げるとトンネルの奥に戻っていった。追い打ちをかけようか悩んだが、私自身も空腹の限界だったため、そこでやめておいた。
さて、肝心の金はどこだろう。門番の話によると、巨人の身体には金貨が埋まっているという。私は短剣を尻尾に突き刺して、それを縦に引き裂いた。尻尾の中身があらわになる。人工筋肉と金属の骨。自立型の遺物は大きく分けて二種類あるが、こいつは機械生物のほうだったか。
DNA
それ以上探しても何も出なかったので、私は闘技場を後にした。もう日が沈みかけていた。私は御腹町で夕食を済ませると、その日は宿に戻ってすぐさま眠りについた。
◇
今朝、私は目を覚ますと真っ先に御腹町へ向かった。パン屋で大量のパンを買い込み、尻尾ノ岬へ。土産屋の老婆のおかげで飯にありつけたのだ。お礼をするのは当然だろう。
だが岬に向かう途中、森の景色に違和感を覚えた。昨日に比べて植物に元気がない。鳥の声も聞こえず、虫の死骸が辺り一面に転がっている。岬に着く頃には、私の違和感は確信に変わっていた。ふと門番の言葉が頭をよぎる。
『尻尾を切り取れ。それでルールを理解できる』
岬に立つ小屋は、廃墟同然の見た目になっていた。今にも崩れそうだ。中に入ると、店の奥で老婆が座っているのが見えた。背中をこちらへと向けている。
いやな予感がする。近づいて声をかけるも返事がない。私は彼女の顔を覗き込んだ。なんということだろう。顔の皮膚がすべて
……なんだ? 私は今何を考えていた? どうも頭がはっきりとしない。……そう、これはロボットだ。彼女はロボット。おそらくこの島の住民もすべて機械でできているに違いない。
そして、門番の語っていたルール。あれはつまり『巨人の身体を切り取るたびに、島の町がひとつ消えていく』ということではないだろうか。
人型の都市は、巨人の身体を模して作られていた。ゆえに尻尾を切り取れば、尻尾ノ岬。右手を取れば、右手町。といった感じで、切り取った部位に相当する町が失われていくのだ。それなら、この状況も説明がつく。
機械人形の住む島、守り神の巨人、特殊なルール。
どうやら私はとんでもない場所に迷い込んでしまったらしい。一刻も早くこの島を出る必要がある。そう決意を新たにして、私は岬を後にした。
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