♯24 水着

 水着姿でも女性らしく見せる方法はあった。


 まず、胸の膨らみは、耐水性のある「上げ底パッド」が市販されていたので、それで胸の谷間を作る事は可能だ。


 このパッドは、グラビア撮影などで本物の女性も使っている優れモノだった。


 男性が思ってる以上に、胸の谷間を作ることは簡単だった。


 問題は、お尻の形状だ。


 ヒップパッドを装着する為には、太ももまで覆う水着が必要だったが、そんな水着はオリンピックの水泳選手が着るようなガチの競泳水着か、おばさんが市民プールで着る花柄のセパレート水着しかなく、どちらもナイトプールには不向きだった。


 僕はヒップパッドの装着を諦め、制服女装をする時と同様にフレアスカートで小さなお尻を誤魔化すことにした。


 水着売り場にはスカート付きの水着が何種類もあったが、ワンピースの水着は、おしっこをする時に全裸になる必要があったので、僕はトップスとパンツとスカートがセットになった水着を買うことにした。


 ただ、スカート付きの水着は、体のラインを隠す事をコンセプトにデザインされていたので、胸元にも「ひらひら」としたフリルがついていて、胸の形状も隠すデザインになっていた。


 それは、大きな胸と大きなお尻を隠したい早耶ちゃんが求めているデザインと一緒だった。


 結果的に、貧相な胸とお尻を隠したい僕と、豊満な胸とお尻を隠したい早耶ちゃんは、同じ水着を色違いで買う事になった。


 一方、瞳美ちゃんと花菜ちゃんは、体のラインがハッキリと出る、ワンピースなのにビキニ以上の露出がある水着を選んでいた。


 僕たち4人は水着のコンセプトが決まっていたので簡単に水着を選べたが、問題は萌子ちゃんと詩央里ちゃんだった。


 標準的な体型をしている二人は、特に隠したい体の部位はなく、と言って強調したい部位もなかったので、無限にある水着の中から一つを選ぶ事に苦労していた。


「ねえ、麻里子さま、どっちが良いと思います?」


 水着を決めかねている萌子ちゃんと詩央里ちゃんは、僕に意見を求めてきた。


 僕はメイクだけではなく、ファッションにも詳しいと思われていた。


「ここの水着は高くないから、両方買っちゃえば?」

「えっ」

「プールに行った時、途中でお色直しをすれば良いじゃんw」

「おお!その手があったか! やっぱ、麻里子さまって天才!」


 僕のアドバイスに光明を得た萌子ちゃんは2種類の水着を買い、詩央里ちゃんは3着も水着を買っていた…。


「うわ〜! すごい景色!」

「琵琶湖が綺麗だね!」


 僕たちはプールで遊ぶ為、わざわざ京都の隣の滋賀県まで来ていた。


 そもそも、今回の計画は宿泊券ありきの計画だったので、プールの場所は最初から、この大津プリンスホテルに決定していた。


 場所が滋賀県と聞いた時は「わざわざ、そんな遠くに行かなくても…」と思っていたが、このホテルは京都駅から電車と送迎バスを乗り継いで、たったの30分の距離にあり、移動時間的には京都市内のホテルと大して変わりなかった。


「じゃあ、早速だけど、水着に着替えようか!」


 スウィートルームに到着した僕たちは、まだ、昼間なのに水着に着替えることになった。


 当初の予定ではナイトプールと聞かされていたが、計画変更を余儀なくされていたのだ。


 そもそも、ナイトプールには18歳未満のお子様は入れないことになっていた。


 僕以外の5人は16歳か17歳だったので、当初から計画は破綻していた。


 他のプールに変更する事も考えたが、僕の更衣室問題があった為、結局、このホテルのプールに時間を変更して行くことになってしまった。


 この部屋には2名が宿泊出来るようになっていたが、当初は部屋を着替えに利用するだけで誰も宿泊しない予定だった。


 しかし、部屋を利用するのが夕方までになった事で、花菜ちゃんが「それなら、彼氏とお泊りするw」と言い出した。


 宿泊券の持ち主の意見は絶対なので、僕たちは従うしかなかった。


 結果的に僕たちは、花菜ちゃんが彼氏とお泊りをする為のカムフラージュに使われる事になった。


 花菜ちゃんのお父さんは、娘が女友達とプール遊びをするものだと思って、一泊10万円以上するスウィートルームの宿泊券を振る舞ってくれていた…。


 僕は同じ男性として、花菜ちゃんのお父さんが可哀想に思えた。


「ねえ! 麻里子さま!」

「何?」

「麻里子さまって、チンコも綺麗なんですよねw 花菜から聞きましたよw」

「えっ!」


 僕が花菜ちゃんの方を見ると、彼女は表情とアイコンタクトで僕に謝罪の意思を伝えていた。


 本当に、女の世界には内緒とか秘密という概念はないようだ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕は放課後だけの女子高生 電気羊の夢 @kimico

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ