♯23 ナイトプール

「皆でプールに行くことになったんですけど、麻里子さまも一緒に行きません?」

「行きません」


 僕がいつものファミレスで女子高生たちに合流すると、萌子ちゃんが僕をプールに誘ってきた。


 夏休みになった彼女たちは、暇を持て余しているようで、夏休みの予定を立てているようだ。


「え〜!何でですか?」

「だって、日焼けするでしょ?」


 僕は自分の女の魅力が白い肌だと自覚していたので、男モードの時も日焼け対策を欠かさなかった。


「それなら、大丈夫です! ナイトプールですからw」

「水着に着替える場所がないから無理!」


 僕は男なので、女子更衣室に入ると建造物侵入罪で逮捕される可能性があり、男子更衣室に入るとレイプされる危険性があった。


「それも、大丈夫です! じゃ〜ん! スウィートルームの宿泊券!」

「何それ?」

「花菜のお父さんが株主優待で貰ったんです! だから、着替えはホテルの部屋でするので、問題ないです!」


 彼女たちが行こうとしているのは、一流ホテルのプールのようだった。


「女の水着を持ってないから無理」


 正確に言うと、僕は早耶ちゃんから貰った、お下がりのK女のスクール水着を持っていたが、タンクトップとハーフパンツを組み合わせた紺色のセパレート水着は地味で、学校以外の場所で着られる代物ではなかった。


 それに、誰かが3年間使い込んだ水着のクロッチ部分には、女性器の形をしたシミがついていた…。


 男性の中には女性の使用済み下着に興奮する変態もいたが、僕は別のカテゴリーの変態なので、汚れた水着を直接身に着ける事に抵抗があった。


「それなら、私たちも一緒ですw」

「えっ」

「一緒に水着を買いに行くことになってるんですよw」


 僕は完全に退路を断たれ、プールに行くしかない状況に追い込まれていた。


 恐らく、彼女たちはプールから上がった後のメイク直しを僕にさせるつもりのようだ。


「分かった、行くよ」

「やった!」


 彼女たちはメイク要員を確保できて喜んでいたが、すぐに「水着をどこで買うか?」に話題は切り替わっていた。


 彼女たちにとって、水着を買うこと自体も一つのイベントのようで、楽しそうに相談を始めた。


 僕はそんな女子高生たちを尻目に、ドリンクバーを注文し席を立つと、花菜ちゃんが後をついてきた。


「彼氏とはどうなったの?」

「おかげ様で、ラブラブですw」

「良かったねw あっちの方は大丈夫?」

「はい!初めての時も全然痛く無くて、昨日も、色んな体位で5回もしちゃいましたw」

「5回!」

「それに、麻里子さまのお陰で、彼からフェラが上手いって褒められたんですw」


 花菜ちゃんにはセックスの才能があるようで、初体験から一週間も経っていないのに、既にセックスの達人になっていた…。

 

「これなんか、麻里子さまに似合いそうw」


 僕は女子高生たちと一緒にファッションビルの特設会場にある水着売り場に来ていた。


 「そんなの無理だよ!」


 瞳美ちゃんが僕に勧めてきた水着は、体のラインが強調されるデザインのビキニだった。


 女装とは女物の洋服を着て見た目を女性にすることだったので、体を覆う面積の少ない水着は女装には適していなかった。


 下手をすると、男が女性の水着を着ただけのド変態に見えてしまう…それだけは避けなければならない…。

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