♯22 ペニスのオブジェ

「それは、ダメだよ!」

「麻里子さまは、女の人とセックスするんですよね?」

「うん…逆に男とはした事ないし、したいとも思わないけど…」

「じゃあ、私とセックスして下さい! お願いします!」


 女の子の方からセックスをしたいと言われる…普通の男なら泣いて喜ぶ僥倖だったが、僕と花菜ちゃんは女友達の関係なので、それは、良くない事のように思えた。


「彼氏に、実は処女ですって告白すれば?」

「でも…」

「きっと、その方が彼氏も喜ぶよ!」


 昔から「男はその女の最初の男になりたくて、女はその男の最後の女になりたい」と言われていて、自分が初めての男になれる事を喜ばない男はいない筈だ。


「彼氏も処女は面倒臭いって…」

「それは、花菜ちゃんに話を合わせてるだけだよ!」


 彼女から「私は処女じゃない」と言われた彼氏が「俺は処女の方が好きだ」なんて言う筈がなかった。


「実は私…自分で処女膜を破ろうとした事もあって…」

「えっ!」

「でも、痛くて無理だったんです…だから、彼とする前に慣れておかないと…怖くなって、また、彼を拒絶するかもしれないんです…そうなったら…」


 男にモテる花菜ちゃんは、今までに何十回も男に迫られていた筈だが、セックスが怖かった彼女は、その全てを拒絶していたので、過去の彼氏たちは、そんな彼女から離れていった。


 恋愛とセックスは別物で、恋愛感情が全くない相手ともセックスが出来るし、一度も会ったことのない人に恋愛感情を抱き、一生その人のことを想い続けることも出来た。


 しかし、好きになった人とセックスがしたいと思うのは当然のことで、特に若い男なら、セックスをさせてもらえない事は、別れる理由に充分だった。


「どうやって処女膜を破ろうとしたの?」

「道具を使って…」

「道具?」


 花菜ちゃんは、ドレッサーの鍵のかかる深い引き出しから、黒いレジ袋に包まれた大きくて重そうな「物体」を取り出した。


 それは、ディルドと呼ばれる男性器を模した女性用のアダルトグッズのようだったが、サイズが尋常ではなく、成人男性の前腕ぐらいの大きさがあり、しかも木彫りで出来ていた。


「何!これ!」

「えっ…オナニーの道具じゃ…」

「違うよ!こんな大きいの入る訳ないでしょ!」

「えっ!男の人ってセックスの時に大きくなるって…」


 花菜ちゃんが取り出した「物体」はディルドではなく、東南アジアの民芸品のオブジェで、お母さんの会社の女性社員さんが「お母さんには内緒だよw」と言って、出張先のお土産として渡した物だった。


 恐らく、その女性社員さんは花菜ちゃんを笑わせようとしただけで、エロい見た目の彼女が処女だとは夢にも思わなかったのだろう。


「こんな大きいのが入るのは、メスのゾウだけだよ!」

「えっ!そうなんですか!」


 僕はゾウのペニスの大きさを知らなかったが、この木彫りのペニスを膣に挿入出来る女性は、人間の拳を挿入出来るレベルのセックスの上級者だけだと知っていた。


「もしかして、花菜ちゃんって見たことないの?」

「勿論ありますよ! お父さんのとか…」

「えっ!花菜ちゃんのお父さんって、こんなに大きいの?!」

「いえ…お父さんのは、こんなに大きくなくて…」

「エッチな動画とかは?」

「怖くて、あまり観た事なくて…男の人って、皆あの大きさになるんじゃないんですか?」

「なる訳ないじゃん!」


 友達からセックスの達人だと思われていた花菜ちゃんは、見当外れな事を言っても「上級者レベルになれば、そうなんだ」と思われ、友達から間違いを指摘される事がなくなり、結果的にセックスの知識が小学生レベルで止まっていた。


 花菜ちゃんは、このペニスのオブジェを何度も挿入しようと試みたが、痛すぎて出来なかったそうだ。


 恐らく、その時の痛みは出産時の痛みに近いと思われ、彼女は勃起した男性器に恐怖心が芽生えて、なるべく見ないように努めていた。


 今まで男を受け入れて来なかったのも、勃起した男性器に対する恐怖心からだった。


 しかし、そんな花菜ちゃんが彼氏とのセックスを決意した…これは凄い勇気で、本気で彼氏の事が好きなのだと分かった。


「花菜ちゃんとセックスは出来ないけど、本物を見せてあげるねw」


 僕は自分のスカートの中に手を入れ、ショーツとガフパンティを脱ぎ、スカートを捲って男性器を花菜ちゃんに見せてあげた。


「綺麗!麻里子さまって毛が生えてないんですね!」

「生えてるけど、脱毛してるのw」

「そうなんですか!お父さんのと同じ位の大きさだけど、白くて綺麗!」

「触ってみて」

「はい…あっ!柔らかい!スポンジみたい!」

「普段は、この大きさだけど、興奮したり、刺激を受けたりしたら、大きく硬くなるんだよw」

「あっ!大きくなってきた!」


 僕の男性器は花菜ちゃんの手の中で徐々に勃起していった。


「これが、完全に勃起した状態だよw」

「えっ…小さい…」

「こらっ!小さいって言うなw 私はクオーターだから、これでも日本人の平均より大きいんだからねw」

「そうなんですか!この程度で?」

「この程度って言うなw 彼氏のを見ても、小さいとか絶対に言っちゃダメだからね!」

「はいw でも、この大きさなら余裕で入りそうです!」


 僕は、ついでに手や口でする方法を花菜ちゃんに教え、一般的なセックスの段取りも教えてあげたが、実際に彼女とセックスをする事はなかった…。

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