♯21 勝負下着
「じゃあ、これなんかどう?」
「え〜! それってダサくないですか?」
「そんな事ないよ!清楚で可愛いと思うよ」
「でも、カップの形が気に入っていないんです…ロケットみたいに尖ってるでしょ」
「取り敢えず、着けてみなよ」
僕は花菜ちゃんの勝負下着選びに付き合わされていた。
彼女の部屋のセミダブルのベッドの上は、色別に並べられた彼女の下着で埋め尽くされていて、僕の目の前には上半身裸になった花菜ちゃんの姿があった。
花菜ちゃんは30枚以上のブラジャーを所有していたが、その殆どが、お母さんが勝手に買ってきた物で、実際に彼女が着用している一軍のブラジャーは自分で買った3枚だけだった。
その一軍のブラジャーはどれも曲者で、一番のお気に入りのブラジャーはヘビーローテーションし過ぎて、ホックの土台が「ふにゃふにゃ」になっていた。
二番目のお気に入りは、凝ったデザインのブラジャーで、肩のストラップが二重になっていたり、背中のホックが4段もあったりして、男が手探りで外せる代物ではなかった。
そして、三番目のブラジャーは肩紐なしでもズレないタイプのブラジャーで、ホックが背中だけではなく前にもついていた。
前のホックは乳房を寄せて胸の谷間を作る為の物で、前のホックを外してもブラジャーが外れる事はなかった…きっと、初見の男はパニックになる筈だ…。
僕が勧めるブラジャーは、全て花菜ちゃんのお母さんが買ってきた物で、彼女が一度も身に着けた事のない物だった。
お母さんと花菜ちゃんは服の趣味が全く合わないようで、今、着ている洋服も花菜ちゃんのイメージと懸け離れていたので、恐らく、お母さんが買った物だと思われた。
「ほらっ、可愛いじゃん!」
「え~、胸が尖って見えません?」
「そんな事ないよ」
「彼氏に『お前の胸ってロケットみたいだなw』て言われたらどうするんですか!」
「そんな事、思ってても言わないよ!」
「あっ!やっぱり、麻里子さまもロケットみたいって思ってるんだ!」
勝負下着選びは難航していて、部屋は険悪な空気に満ち溢れていた。
「もういいです!スポブラにします! スポブラなら誰でも脱がせられるでしょ!」
「花菜ちゃんがそれで良いならそうすれば! ただ、脱いだ時に髪の毛がバサバサになるけどね!」
頭から被るタイプの下着や洋服は、脱ぐ時に注意をしないとメイクや髪型が崩れる危険性があった。
「あっ…そっか…じゃあ、お洋服も選び直さないと…もうダメだ…」
花菜ちゃんは、この世の終わりみたいに落ち込み泣いてしまった。
僕はベッドの上に座り込んで泣いている花菜ちゃんの肩を抱いて慰めてあげた。
「そうだ!一番のお気に入りのブラを新しく買い替えれば良いんじゃない?」
「あっ!」
「今なら、ネット通販でも土曜日に余裕で間に合うし、サイズも分かってるから試着しなくても大丈夫でしょ!」
「それだ! やっぱ、麻里子さまって天才!」
僕の提案で花菜ちゃんの機嫌は一瞬で直り、笑顔になった彼女は上半身裸のまま僕に抱きついてきた。
幸い、一番のお気に入りのブラジャーは製造中止になっておらず、花菜ちゃんのサイズも在庫があった。
「でも、私…カードを持ってないんです…」
「心配しないで、私がプレゼントするからw」
「いいんですか!」
「うんw」
僕は女子高生にブラジャーをプレゼントする星の下に生まれたようで、瞳美ちゃんに続いて花菜ちゃんにもブラジャーをプレゼントすることになった。
これで、勝負下着問題は解決したが、下着選びと洋服選びを終えた頃には、とっくに日が沈んでいた。
「これで、完璧だね!」
「はい!」
「じゃあ、私は帰るねw」
「あっ、麻里子さま」
「何?」
「最後にもう一つお願いしてもいいですか?」
「いいよw」
「私とセックスしてくれませんか?」
「え~~~!!!」
僕は今世紀最大の衝撃を受けていた…。
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