♯20 処女

 花菜ちゃんは子供の頃から男の子にモテる女の子で、同級生の中で最も早く彼氏が出来たそうだ。


 しかし、子供だった花菜ちゃんは、付き合う事とセックスは関係のない事だと思っていて、付き合った彼氏とキスから先の事をしていなかった。


 やがて、周りの女子たちにも彼氏が出来始め、花菜ちゃんは友人からセックスの相談を受けるようになっていた。


 花菜ちゃんは皆からセックスの経験者だと思われていたので、自分が処女だとは言い出せず、適当に話を合わせてその場を乗り切っていた。


 そんな花菜ちゃんは、状況を打開すべく彼氏とセックスをしようと思ったが、その時の彼氏が友達のお兄さんだったので、彼女は自分が処女である事が友達にバレてしまう事を恐れ、最後の一線を踏み出せなかった。


 そして、いつしか花菜ちゃんはセックス自体が怖くなっていて、新しく出来た彼氏ともセックスが出来ずに破局していた。


 彼氏と長続きしない花菜ちゃんは、新しい彼氏が次から次へと出来ていたので、友達からは「ヤリマン」だと思われていた。


 また、花菜ちゃんは自分が処女である事を隠す為に、意図的にエロい格好をしていた事も「ヤリマン」だと思われる要因の一つだった。


 花菜ちゃんは早耶ちゃん程ではないが、巨乳の部類に入る胸の大きさをしていた。


 そして、彼女はその大きさを隠そうとしなかったので、早耶ちゃんよりも胸が大きい印象になっていた。


 男から見た花菜ちゃんの印象は、簡単にナンパで落とせて、10分後には多目的トイレでセックスが出来そうな女だった。


 恐らく、花菜ちゃんが100人以上の男性経験があると聞いても、誰も疑わないだろう。


「でも、薬を飲んでるんでしょ?」

「私、生理痛が酷くて…」

「あっ、そうだったんだ…ごめんね…」

「いえ、謝らなくいいですよw」


 僕は、男の悪い所が出ていた…避妊薬はセックスを楽しむ為の薬だと決めつけていた。


 男の僕には卵巣や子宮がなく、当然、生理もなかったので、女性の生理痛の辛さを知る由もなかった。


 K女の早耶ちゃんも生理痛が酷く、生理期間中は辛そうにしていて、一日中ベッドから出られない日もある程だった。


「ところで、何で私に打ち明けたの?」

「麻里子は他の子と違うっていうか…」

「私が男だから?」

「それもありますけど、口が堅いし…」

「そうかな?」

「はい!この前のオナラの件も黙っていてくれましたしw」

「そんな事もあったねw」


 僕が花菜ちゃんたちと祇園祭の宵々山に行った時、彼女が大きな音のオナラをして、その音を聞いたおじさんが驚いて、持っていたイカ焼きを落とすという珍事件があった。


 その場に居合わせていたのは僕だけだったので、僕は、その事を他の子には内緒にしてあげていた。


 女の子は基本的に噂好きで、女社会では内緒とか秘密という概念は存在しないようだ。


「で、私に何を聞きたいの?」

「はい…男の人って、どんな下着が好みなんですか?」

「えっ」


 僕は、花菜ちゃんの乙女すぎる質問に笑いそうになった。


 彼女は間違いなく処女だ。


「う~ん…男は基本的に女性の下着に興味がなくて、興味があるのは裸だけだから、下着をつけていない状態が一番好きかなw」

「え〜!真面目に答えてくださいよ!」

「私は大真面目よw でも、強いて言えば、脱がせ易い下着かなw」

「脱がせ易い?」


 花菜ちゃんは僕の想定外の回答を聞いて、戸惑っている様子だった。


 女物のショーツは、概ね男性下着と同じ構造をしていたが、問題はブラジャーだった。


 僕のような特殊な男以外はブラジャーをつけた経験がなく、ホックのある下着に慣れていなかった。


 ワコールやトリンプ等の一流メーカーのブラジャーは問題なかったが、安いブラジャーの中にはホックの土台となる生地が「ふにゃふにゃ」で、中々ホックが外れない物があった。


 また、フロントホックのブラジャーは、メーカーやデザインによって留め具の構造が違い、初見の男には外し方の見当もつかない筈だ。


 セックス前の男は、女性を格好良くリードしたいと思っているので、ブラジャーを外すのに手間取っている姿を見られたくないのだ。


 勝負下着に求められるのは、セクシーなデザイン性ではなく、男に恥をかかせない配慮と脱がせ易い機能性だった…。

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