第39話
「いや、それはあんまりだろ?エルン、お前ナディアレーヌ姫に婚姻でも申し込むつもりだったんじゃないのか?」
「は?何故そうなる?何故わたしが?」
「「は?!」」
俺とエドの声が重なってしまった。
宰相補佐としては腕の見せ所だと色々乗り出そうとしていたのに・・・と小さくつぶやいた声が聞こえたがその気持はわかる。
「ナディアレーヌ姫は神託の姫だ。大切にするのは当たり前だろう?」
クルンと首をかしげるエルンは本当になんのことだ?とでも言いたくなったような顔だ。
だから俺はそれを聞いてまた吃驚した。
いや、それを言っても普段のご令嬢方の扱いとあまりに違うから!と叫びたくなる。
エルンは全くと言っていいほど女性とは距離をおいている。
そりゃ請われれば踊るしお茶をともにすることもあるが全て政治的な意味合いを持つ。
政治的に大切にしている相手にはいくらでも丁寧に扱う。もちろん手の甲にキスくらいはする。
グローブ越しになら。
だがしかし何があってもダンスは踊っても抱きしめることはない。
手の甲にキスをしたとしても髪に触れることはない。
そんなことを思っていたら一足先に立ち直ったエドがニヤリと笑った。
ああ、また何か思いついた顔だなぁ・・・と眺めていると。
「ほう、じゃあ何故自ら近づいた?自分の近くに他のご令嬢が寄るのを全く許さないのに。」
「・・・・ん?・・・ふむ。」
エルンが考え込んでしまった。
廊下で立ち止まるから俺たちも立ち止まってしまう。
「ナディアレーヌ姫は、わたしを治すと言ってくれた。それで十分だと思ったのだが・・・どうしても抗えないほどいい香りがした。先にわたしの香りを当てたからわたしもお返しのように当てたくなって。
でもその時ナディアレーヌ姫の首筋から香水じゃなくて、花の香がしたから・・・。」
その言葉にまた二人して固まった。
エルンが?
女性の香りを良い香りだと?花の香りだと?
エドと目があった。これはひょっとするとひょっとするかもしれない。
「あー・・・エルン。普段の君はどれだけちかづかれようともこの国の重要な貴族のご令嬢だとしても自ら近づくことはないし近づかせることはないって自覚はあるか?」
「あの者たちは臭い。」
バッサリだ。
「いや、くさいわけ無いだろ!!磨き上げて香水ふってきてんだから!!」
「だからくさいのだ。」
いや、くさいと言われてもなぁ・・・。
まあ、俺もエドも香水が苦手だ。現にエドは自分の領地の特産品が花を使った香水や練り香水だ。
そのためにエルンの唯一好きなバラをふんだんにこの王宮に植えて管理してやっている。
「それにナディアレーヌ姫は当てたのだ。ロサ・キネンシスだと。嬉しくなってな。」
と、こちらが赤面するほどに蕩けそうな顔をして笑う。
そんな顔をするのは自分がどういった常態かだなんてきっと解っていない。
それが何たるかを。
ああ、こいつは知らないんだ。恋を。
だから自分が落ちたことが何なのか解っていない。
どうしてナディアレーヌ姫を近づかせたのかも、髪に触れたのかも。彼女の香りだけが安らぐのかも。
そういうことなんだということが解っていない。
軽くため息を付いてしまった。
そしていつまでも立ち止まっていられないと俺は先にあるき出す。
こんな話廊下で出来るか!執務室に逃げ込むしか無いだろう。
俺の動きに合わせてエルンもエドも付いてくる。
動き出すのは護衛騎士の役割だ。先陣を切るために前を歩く。
速歩きで近づいてきたエドと目があった。
苦笑いをするエドは軽くエルンの方に振り返り、揺さぶりと爆弾を投下する。
「ああ、やっぱりかぁ。」
「は?」
そう話しながらエルンの機嫌がちょっとずつ悪くなってきているのを感じる。
ああ、早く着け。執務室は目の前なんだから。
ドアを開けて中を確かめて無人なことを確かめる。
以前どこかの伯爵令嬢が隠れていてエルンに迫ったことがあったため必ず俺が一番最初に入って安全を確かめる。
エルンの背後はエドが守る。
代替がこの布陣でこの部屋に入る。
大きく開け放ち、無人だということを知らせる。
それを見てエルンはすっと入ってきた。
扉を締めた途端に三人の空間にまた戻り。
そこで改めてエドが爆弾を投下した。
「で。惚れたんだな。」
おい・・・直球すぎるだろ!!
孤高の国王陛下は医療国の皇女を溺愛する こころ @kokoro33333333
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