我が家の日常
フクロウ
1 挨拶すれば悪い人じゃない?
はじめまして。
お読みいただきありがとうございます。
これとは別にお話を書かせていただいておりますが、こちらでは我が家の日常を書いていきたいと思います。
1話目は、今年の5月、GWの終わり頃の話です。
よろしくお願いします。
※
自営業の我が家は、定休日以外は祝日でも仕事が基本。なので世間はGWで盛り上がる中、連日普通に仕事。
ですが、祝日と定休日が重なった珍しい日。幼い子供がいるわけでもないので、出かけることもなく、午前中から家族各々自由に過ごしていた。
フクロウは洗車や溜まった録画を消化。
祖母と母は漬物作り。
父はウトウトしていたかと思えば新聞を広げたりスマホをいじったり…そして突然、
「ワンコ達の散歩に行ってくる」
と、立ち上がると駆け寄るワンコ2頭。
もう2頭は高齢の部類になるので、気分次第で散歩に行ったり行かなかったり。この日は庭先の散策で満足な様子。
散歩の準備をしている父に祖母が声をかける。
「裏の畑でスナップエンドウ採ってきて」
「はいよ」
家の裏には祖母の趣味の畑があり、季節ごとの野菜が実ります。散歩のついでに収穫を頼まれるのはいつものことです。
「苺は?そろそろだろ?」
「あれはまだだ!明日だ!!」
苺は祖母の大好物。微妙な変化も見逃さず、大切に大切に育てて、最高の状態で自らが収穫する。それが祖母の毎年の楽しみだったりもする。
それを知ってるくせに、父は何故聞く?などと思いながら、ワンコに引っ張られるようにして出て行く父を見送った。
父が帰ってきたのは約1時間後、フクロウがお昼の準備をしている最中だった。
「今年は豊作だな。これだけ採ってもまだまだ採れるぞ」
袋いっぱいに採ってきたスナップエンドウを見せながら、畑の様子を教えてくれる父。
あれは不作だ、あっちはもうすぐ収穫できるぞ。フクロウは相槌を打ちながら料理をしていたが、父の次の言葉に手が止まった。
「そういえば、畑の苺コーナーに知らんお婆さんがいたぞ」
「は?誰?」
「だから知らん。ばぁちゃんの新しい友達だろ?よく勝手に採っていって〜って言ってるだろ、近所の人に」
「いや、でも苺だよ!?ばぁちゃん苺は誰にも触らせないじゃん、傷むからって」
「でも、こんにちわーって挨拶してきたしな。友達だよ」
おいおい父よ…と思いながらも、最近の祖母ならそんなこともあるかな、なんて思った。
畑は趣味と呼ぶには広く、祖母の年齢的に畑作業がしんどい時もあるようだった。
家族が手伝うことも増えた。だから大切な苺といえど、自分で採っていってと言ったかもしれない。
「だけど、収穫は明日って…」
「今日でも明日でも変わらんよ」
父は既に興味薄といった感じだったが、この数十分後に慌てふためくことになる。
「そんな人、知らん!」
昼食の最中、畑にいた知らないお婆さんがどこの誰かを聞いた答えだった。
「え?いつもみたいに採っていって、って言ったんじゃないの?」
「だから知らんて。そんなお婆さん、この辺にはいない。そもそも、苺を勝手に採らせるわけないだろ!」
「ちょ、えー…もしかして、畑泥棒…だったり?」
まさかねぇ、なんてみんなで言いながらも、食事もそこそこに畑に向かった。
毎年、真っ赤に熟れた実がこれでもかと実っている畑の苺コーナー。しかし、今年そこにあったのはまだまだ小さな緑の実ばかり。
赤く熟れた実はひとつも見当たらなかった。
「……やられた」
祖母がボソッと呟いた言葉で、無性に悲しくなった。
「いゃ、こんにちわーって挨拶してくるもんだから…まさか泥棒とは。だって挨拶してきたから」
子供のようなことを言いながらも、父は青い顔をしてあたふたとしていた。責任を感じているのだろう。
祖母もさぞや落ち込んでいるだろ、と見ると。
「あー、こりゃやられた!そりゃ、堂々と挨拶されりゃあな〜。こりゃ完敗。泥棒は悪いことだけどなぁ〜」
ゲラゲラと笑っていた。
「まぁ、もう少ししたらまた実るよ。…今度やったら、ただじゃおかん!」
ショックはショックだったようだが、それを上回る何かが芽生えてしまったようだった。
その後、畑には『防犯カメラ作動中!!!』とデカデカと書かれた看板が立てられた。祖母の手書きの。
※
畑泥棒の話です。勿論、犯罪です。
残った苺は1週間後に収穫できました。
父が顔を合わせた時に、声掛けをしていたらまた違ったのでしょうが…しれっと挨拶されてはスルーしてしまうのもわかる気がします。
制服や作業着を着ている人に対しては警戒心が薄くなる、というのを聞いたことがあります。それに近いもので、堂々としていたら怪しく感じ難いのかもしれません。
ですが、犯罪は犯罪です!!
皆さんも身の回りの些細な変化やあれ?と思うことにはご注意下さい!
ありがとうございました。
我が家の日常 フクロウ @OWL-CHOUETTE
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。我が家の日常の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます