第6話 模倣?

 俺はそこまで読んでノートを閉じた。


「これは……いやしかし、そんなことがあるのか? 猿が人の模倣をするのはわかる。だが人が猿を模倣するなんて……」

「これ、まるであの本の内容みたいなんです」

「あの本?」

「目羅博士の不思議な事件……主任が読んでいたあの本です」

「なぜあの本と同じことをルイスが?」

「わたしの実験のせいかもしれません……」

「なんだって?」

「わたしの実験では、猿たちに本を与えていたんです。言語理解力の検査のために。もしかしたらルイスはその時に目羅博士の話を覚えて……それで……」


 佐藤さんの顔がみるみる青ざめていく。

 俺は慌てて立ち上がり彼女の肩を掴んだ。


「落ち着くんだ! 君の実験と今回の自殺となんの関係もない!」

「でも……」

「ただの偶然だよ! だから気をしっかりもって!」

「……はい……あれ?」


 佐藤さんが顔をあげると、眦が割けんばかりに目を見開いた。


「どうした?」

「カメラ見てください主任! 三番の檻が!」


 オフィスに設置されたモニタに顔を向けた。

 モニタには猿たちの様子が映し出されているが、三番の檻がもぬけの空になっている。


「脱走⁉」

「急いで確認しに行きましょう!」


 俺たちは猿のいる実験室へと向かった。

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