第2話 ルイス
オフィスを出て小奇麗な廊下を歩き、厳つい自動ドアの前に立つ。
首から下げたIDカードを扉の脇に設置されたリーダーにかざすと、自動ドアが左右に開いた。
部屋の中は色気のないコンクリート作り。濃い獣臭が鼻につく。入ってすぐの壁からバインダーと警棒型のスタンガンをもって先へと進む。
バインダーを片手につらつらと並んだ檻の前にたって中の様子を観察する。
檻の中にいるのは、猿だ。
この研究所では人工的に知能を向上させた猿の研究をしている。
檻の中にいるのは遺伝子編集を施された猿たちだ。
「一番、異常なし」
ロープにぶら下がってゆらゆら揺れている猿をみて書類にチェックを付ける。
せっかく与えてやったパソコンが無残にも破壊されていた。
まぁ、一番知能が低い個体だから仕方がない。
「二番、異常なし」
部屋の隅で積み木遊びをしている猿を見てチェックを付ける。
二番は比較的知能が高いとはいえ、一般的な猿の範疇を出るほどではない。
「三番は……なんだ?」
見ると三番の猿、ルイスは食事用のスプーンを右手首にこすりつけていた。
三番はもっとも知能が高い個体だ。
言語理解能力が高く人間の言葉を理解できるし、パソコンだって扱える。
ただその代わり、たびたび奇行に走る傾向がある。これもその一つだろう。あまり気にする必要はない。
そう思っているとルイスは何度も何度もスプーンを前後させながらこちらに顔を向け、歯を向きだしてにやりと笑った。
その狂気に満ちた笑顔を見た途端、寒気がした。
「……異常なし」
どうにも不快感がこみあげてきて早々に書類にチェックをつけた。
三番は林の担当だ。あんな不気味な猿にいろいろな実験を施さなければならないとは、あいつも不憫な奴だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます