第四章 シュウシン
カスミの家で勉強会をすると言ったが結局、ゲームをしてそのまま解散となった。
守と喧嘩して、3年も話さなくなった原因の道を守と何も話さずに通った。やっぱり仲直りしたとは言え、長く空いた間を埋めるには相当な時間がいるようだった。
「じゃあまた明日な、○○。」
「あぁまた明日。」
でも高校生としての明日は来ない。寝てしまえば
また記憶が飛んで時が経っているだろうと言う感覚があったからだ。
それに加えて、僕は規則性に気づいた。小6から飛んで中3、そこからまた飛んで高3。何かの節目のようなところまで飛ぶと言うことだ。
多分だけど、次は大学4年ではないかな?
ー桜の花びらがどこまでも
遠くに飛んでいくように、、、ー
ふと目を開けたいつのまにか寝ていたし、やはり記憶が飛び、春になっている。
ニュースキャスターは春の訪れを知らせていた。
目の前には350mlの缶ビール、大学の卒論を書いていそうなパソコン、それと寝相の悪い守とカスミがいた。
カーテンの隙間からさす光は2人の薬指を明るく照らして幸せそうな空気を出していた。
そうか僕はまだ嘘をついていたんだ、僕も好きだったカスミは一番の親友のものになってしまったんだ。そう思うと目が熱くなった。
自分に嘘をつき続け、他人の幸せを優先し続けた。その終着点がまた自分の首を絞めていたんだ。
もっと早くから変わればよかった。
そうすれば今のこの状況は変わっていたかもしれないのに。こんなの僕はこの世に存在しないほうがいいんじゃないか、そう考えた。
2人が起きたから必死で目を擦り一言言った。
「おはよう」
カスミは桜が咲いているのを見ると喜んでいた。
「見て!守、○○!桜だよ!綺麗だね〜。
やっぱり桜は○○みたいだね。名前にある通りだもん!守もそう思うでしょ!」
「そうだな。その通りだ。」
名前、、、ずっと思い出せなかった、
その理由はこの世に存在したくないと思っていたからだ。
この世から名前が消えれば、誰の記憶にも自分という存在は消え、守は幸せになると思っていた。
しかし、この2人のおかげで今まで生きてもいいと思えていたんだ。そうだ僕の名前は・・・
あまりこの名前自体も好きではなかった。花の名前が入ると女の子っぽいからだった。周りの人にも
ー花の名前が入るとか、お前女じゃんー
とか小さい時に馬鹿にされていた。でも守るだけは違ったんだ。
「いいじゃん、凄くいい名前だよ思うよ。だってその花は、見る人のほとんどが自然と笑ってるし、みんな上を見上げてるじゃん。それだけお前はみんなを幸せにできる存在になれると思うんだ!」
と声をかけてくれた。一番僕を理解してくれて、
そばにいてくれた。唯一信用できる親友だった。
なのに、、、なのになんでこんなことになったんだ。
今さっきまで仲良く話していたのに、今の僕は手や体が真っ赤に染まっていて、目の前には血が広がり、腹部にはには刺し傷が何個もあり、それに加えて守であるかどうかもわからないほど顔が変形している肉の塊があった。
カスミは隅で怯えていた。まるでバケモノを見ているかのように僕をみていた。だんだんとこうなった理由を思い出してきた。
カスミが、顔を洗ってくると洗面台に向かった時守は言ったんだ。
「○○。本当のことを言ってくれ。本当はまだお前カスミのことが好きだったんだろ。親友の好きな人を奪っておいて、本当のことを知らないと変な気持ちになるだろ。」
僕はまた何も言えなかった。口を開け本当のことを言おうとしたら、守が続けていった。
「俺、カスミとわかれたいんだよね。俺じゃあ、カスミのことを守ってやれないと思う、俺弱いしさ、すぐ怒るから、この前もカスミと喧嘩したし、もう嫌になってきたんだよね。こんな弱い自分に。身勝手でごめんな、お前の気持ち考えずに婚約までしときながら、こんな形になって。」
守は泣いていた。彼も彼自身で言えなかったことがあったのだろう。しかし僕も、とうとう我慢ができなくなっていた。
「あぁ。身勝手すぎる。見損なったよ、守。ずっと我慢し続けてきた。他人の幸せばかり優先してきたから。なのになんだ、別れるだって?
そんな大したことのない理由で?
他人の恋路には足を踏み入れないようにしていたが、僕の気持ちに気づきながら、付き合って僕の気持ちを考えずにまた勝手なことするのか?
人の好きな人を奪ったんだ。最後まで幸せにしてやれよ。」
今までたまっていた鬱憤があふれ出てしまっていた。守を見ると何故か微笑んでいた。
「やっとお前の本音が聞けた。19年くらい一緒にいてようやくだな。でもごめん。もう別れるって決めたんだ。それは親友に何を言われても覆ることはないよ。
本当にごめんな。」
「ふざけるな,,,ふざけるなふざけるな!」
気持ちが高ぶり制御できなくなっていた僕は守を殺してしまっていた。
心に空いた穴は、もうふさがることはなかった。気持ちが落ち着いてきたときにある違和感に気づいた。
それは、守がカスミと別れることになった喧嘩についてだ。カスミとも11年くらいの付き合いになるが、最近喧嘩したなど聞いたことなかったからだ。カスミはよく僕に愚痴を言うことが多かった。守が朝全然起きないということや、喧嘩してしまったことなど。
守は何か嘘をついているのではないかと。守のバックをあさると、大量の薬と診断書が入っていた。余命は持って半年くらいだったらしい。
僕たちに心配をかけたくなくて、そしてカスミを代わりに守ってほしくて、守は嘘をついていたんだ。そう気づくと僕は膝から崩れ落ち大声で泣いていた。その声に気づき、カスミが駆け付け、今の状況になっていたんだ。
唯一といっていい親友が付いた優しい嘘は僕が自ら壊してしまったんだ。
僕は友人のことを気にしながら自殺したkのようにはなれなかったらしい。
そして僕は自首をした。
「『カン!カン!』主文、被告人はきわめて非道で且つ狂気的な犯行に及んだため、異例ではあるが無期懲役と称す。これにて閉廷。」
「いま、容疑者が裁判所から出てきました。体調が悪いのでしょうか?顔色がよくなく、まるで寝ているような雰囲気です。」
マスコミのカメラの『フラッシュが瞼の奥にまで届く。』
「再度、状況を説明いたします。『昨日、深夜。殺人の容疑で』逮捕された○○は、友人である広瀬守の顔を複数回殴り、ナイフで複数回刺し自ら自首をしたようです。
○○容疑者はすべてのことを認め、異例ではありますが無期懲役と判決されました。
○○を乗せた車が留置所へ走り出しました。
今日一日は留置所で過ごした後刑務所に送られるそうです。現場からは異常です。」
僕を乗せた車は留置所へ着いた。
個室で一人になった僕はとても長い夢から覚めた。首には服で作った縄がまかれ、僕は自殺をしようとしていた。
そうかやっぱり走馬灯を見ていたんだ。夏祭り、あの三人で一緒に帰った日、その日に初めて守と喧嘩したこと、守と仲直りできたこと、
守を,,,殺してしまったこと。
あの日、守はどんな走馬灯を見たのだろうか。たくさんの楽しかった思い出が思い浮かんだのだろうか。
僕は後悔したことしか出なかったよ。
本当にごめんな。
今からそっち行くから。
一緒に天国に行けないだろうけど三途の川で待っていてよ。
そして、僕を気のすむままに殴ってくれ、それで許してもらおうなんて思ってもいないけど。
そうしないと,,,このまま終わりたくないから。
じゃあ待っててね。
「速報です。先ほど留置所へ送られた○○が自殺したとの連絡が入りました。遺体の前にはメモが置いてありました。以下は内容です。」
守へ
許してもらおうなんて思いません。でもこうでもしないと、罰がなさすぎると思いこのような決断に達しました。本当にごめん。
これは、君を殺したことへの『贖罪』だ
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