人間失格者の最強チート

生駒 祐逸

1章 神子の捜索者・社会への反乱篇

第1話 「第XX話 この物語が始まる音が繋ぐ旅の途中で」


 ―ある人が言った、「天才とは、足りないものを補うためにある部分が超人的に発達した者のことを言う。」と―

 ―「誰が言ったの?」―

 ―「忘れた」―

 ―馬鹿と天才は紙一重とは、よく言ったものだ…―


「お‥きろ‥ろー‥ろ〇〇起きろ、おいっ」

 誰かが呼んでいる。そして僕は意識を取り戻す。

「あれ、僕は何してたんだ?」

 目がだんだん鮮明に物を捉えられるようになってきた。

 まず目についたのは、天井の照明、次に主に漫画がぎっしり詰まっている無機質な本棚。パソコンのモニターで埋め尽くされた勉強机。

 ああ、ここは僕の部屋だ。

「お前、寝ぼけてるのか?しっかりしろ」

 目の前にいる少女、雨霧凪沙あまぎりなぎさが言う。

「なんで当たり前のように僕の部屋に居るんだ…」

「お前、ほんとに大丈夫か?起こせって頼んだのはお前だぞ。

 記憶とか大丈夫か?名前言えるか?」

 バカにするな、名前ぐらいしっかり言える。

「名前…たしか、“なにや”って呼ばれていた気がする」

 思いっ切りうろ覚えだった…


「いや確かにお前の苗字は“何弥”だが…“気がする”って、ほんとにしっかりしろよ“迅鞆“さんよ。十代でボケないでないでおくれ」

 ”迅鞆“…何弥迅鞆なにやはやとも…名前を聞いていろいろ思い出してきた…

 そして今一番大事なことを聞く。

「凪沙、今日学校は?」

 凪沙の顔がみるみる青くなっていく。

 そして、震えた声で言った。

「一番大事なこと忘れてた…今、七時半だ」

「!!??」

 僕の喉から声にならない叫びが漏れる。

 七時半、それは僕たちが家を出て学校に遅刻するかしないかの瀬戸際の時間。始業は八時。

 うちの高校は、家から約五キロの地点にあり、そしてチャリ通は禁止。電車やバスは駅が微妙な位置にあるので結局歩いたほうが早い。という何とも素敵な物件だ。

 僕は、小、中と運動部に所属していたので朝はしっかりご飯とみそ汁と塩鮭を食べたいのだが、凪沙はそれを許してはくれなかった。トホホ…


 ◇ ◇ ◇


 そして僕は腹ペコで倒れそうになりながら学校にたどり着いた。

 しかし、チャイムは先ほど鳴り、現在位置は教室前…

「ギリギリ…セーフだな」

 凪沙が少し息を切らせながら言う。

 まぁ、家から走って階段を4階まで駆け上がったらみんなこうなるであろう。

 僕?僕は腹の方が気になってそれどころじゃない。

「アウトだよ」

 僕は冷静にツッコム。逆にセーフな要素があるだろうか。

 だが凪沙は、

「堂々と教室に入っていけばバレないんだぜ」

 という主張をする。

 どこ情報なのかすごく気になる。

 そんなことする勇者が居れば是非拝みたい…

 勇者、居ました…

 堂々と入っていった、勇者もとい凪沙であったが、

 チャイムが鳴っている=先生がいる訳で、無事確保されてしまう。

 ただでさえ僕らは目立つのだからこういうことはやめて欲しい。

 そう切実に願う。


 ◇ ◇ ◇


 なんやかんや怒られた僕らは今、朝礼中である。

 凪沙は隣で何か恨み言を言っているが、「遅刻したのに堂々としているとは何事だ」という先生の主張は正しいと思う。

「さぁ、昨日も言った通り今日は小テストがある。一限から七限間であるが精々頑張ってくれ。」

 しょうてすと?僕は先生が言った事が理解できなかった。

 そもそもなんで一限目から七限目までテスト尽くしなのか?

 ス●ローのフェアなのか?と言いたい気分である。

 先生は、「小テストを今日やる」と昨日言ったらしいが、僕には覚えがない。

 隣を見てみると、そこには顔面蒼白の凪沙がいた。

 お前もか!!!と心の中で突っ込むのであった。


 ◇ ◇ ◇



 そして午後の予鈴が鳴って、

「終わった…」

 と、どこからともなく(隣から)絶望しきった声が聞こえてくるのだった。


 ◇ ◇ ◇



「いやでも、まさか迅鞆がテストの事聞いてないなんて意外だよなー。でも、能力の使用がOKだったらお前普通に満点取れると思うんだけどなぁ」

 僕たちは今、帰りながら談笑をしていた。

「まぁ、能力の使用はカンニングとみなされるから仕方ないだろ」

「そうだけどさー」

「あと、もしカンニングするならお前の能力の方がテスト向きだろ。" 頭をよくする能力“なんて羨ましすぎるわ。」

「おい、ちょっと待て、何回も言うが私の能力は”頭をよくする“じゃない!

 ”魔法が使える“だ!」

 凪沙が少し怒りながら言うが、凪沙の能力は”頭をよくする“で間違いない。

 凪沙は魔法使いにあこがれているらしく、小さいころにその能力と持ち前の器用さで、魔法を開発したとかなんとか…

 魔法を創ったという事で結構凄いことをしているが本人は、”これは能力だ“と言って否定している。

「能力で強化しているだけに元が残念だな」といつも思う。


 -こういう何気ない日常が僕は好きなのだ。

 こんな何も無いいつも通りの幸せがいつまでも続けばいいのに…

 そう思っていた。

 ただそんな願いとは裏腹に僕はやっかみ事に巻き込まれるらしい。

 神が居たら文句を言ってやりたい。「何故僕が願っている事と反対の事をしでかしてくれるのか?」と。-


 先程まで、人が行き来し、僕たちが談笑をしていた繁華街に轟音が響いた。

 そして次に目を開けて映った物は、夕方ののんびりとした空気と喧騒の混じった繁華街から雰囲気が変わり、暗く、うす気味悪くなった町と、轟音が鳴ったであろう場所。すなわち爆心地で狂った笑い方をしている“影”だった。そして“影”の横には影によく似た男が立っている。恐らく本体であろう。本体であるならば、“影”にすべてを任せ、隠れていればいいものを…

 それをしないところを見ると、離れられない事情か、自分の力に自信があるのだろう。

 この世の人間のステイタス値は、一部の人間を除き、能力者、無能力者の関係なくだいたい1400。

 つまり、ほぼ全員数値上の実力は同じ。そしてここは、人が賑わう繁華街だ。

 おかしな行動をしたら周囲の人間からフルボッコにされる。

 つまり、男に圧倒的不利な状況なはずだ。それなのに、男は堂々とそこにいる。

 この男は、ステイタス値が異常か、数の不利を覆せる程の策、又はがあるのか。

 どちらにせよこいつはたぶん厄介だ。そんなことを考えていると、

「おい小僧、お前死んでないのか?」

 と男に聞かれた。確かに周りを見渡すと立っているのは俺一人だ。こりゃ天狗にもなるわけだ。

「生きているのか?」ではなく、「死んでないのか?」と聞かれたところを見ると殺すつもりだったのだろう。


 ふと、凪沙を見ると気絶していた。これは何として凪沙を守らないといけない状況らしい。

 そんな風に俺が凪沙の安否確認をしていると、

「おいっ、聞かれたことには答えろって親に習わなかったか?」

 と切れ気味に男がこっちに突進してくる。なんだコイツ?カルシウム足りてないんじゃないのか?

 これはいわゆるピンチなのかもしれない。

 なら、

「僕は弱い…でも一人ぐらいは守って見せる」

 と、僕は声に出して覚悟を固め、スペル・・・を発動する。

 スペルとは、能力持ちが自らが申告した能力を使った技。詰まる所、必殺技やそれに準する技の事だ。

 そして、僕が男の下あごをアッパーカットの形で殴り一瞬で勝負がつく…はずだった。

 僕の拳は空を切り、目の前の男は視界から消え失せていた。いや、正確には僕の数メートル先で倒れていた。

 いつの間にか男の分体と思われる“影”も消えており周辺あたりには、

「そいつらに今死なれると困るのよね」

 という声が響いた。

 声がした方向を見るとそこには、動きやすそうな和服らしき格好(あいにく僕は和服とかに詳しくないのでよくわからないが、巫女服っぽい)をした少女がいた。恐らく年齢は同じぐらいだろうか?

 すると、少女は、

「久しぶりね、凪沙になにや・・・

 と僕たちの名前を呼んだ。

 ちなみに僕はこんなやつに見覚えは無い。

 気絶してるので聞きようがないが、見覚えがないのは凪沙も同じだろう。

 と考えていると少女は、

「このままここにいると、ゴシップとかのネタにされそうだし、人が集まる前にお暇させてもらうわね。あんたたちも野次馬とかに引っかかんないようにうまく逃げなさいよ。」

 などと適当なことを言って去ってしまった。

 このまま居たら野次馬ではなく警察が来ると思うので取り敢えず逃げることにした。

 だって目立ちたくないし…第一俺たち被害者側だし何かあっても大丈夫でしょ。多分…

 それとそろそろ時間がやばいかもしれない。…限界だ。

「調子に乗ってスペル使うもんじゃないな…」

 そう自嘲気味に呟いて、最後の力を振り絞り、地面を力強く蹴り、

 跳んだ。

 凪沙の事はしっかりと持っているので大丈夫だ。問題ない。


 ◇ ◇ ◇


 そして、俺達は家の近くまで来ていた。

 周りは驚くほどの快晴。陽の光が眩しい。世界が暗かったのはあの能力者の所為だったみたいだ。

 それならなぜが倒した時に元に戻らなかったのか?

 謎だが、まぁ、考えても仕方がない。


 ん?俺は今、玲?俺は今そう考えたのか?

 玲。誰だそれ。そもそも…

 いいや、それについても考えても仕方がないので、考えるのを放棄する。という事にしておこう。


 などと思考を巡らせていると、視界が傾いた。

(あ、思ったより長く持ったな)

 そう考えながら、俺は後ろに倒れるのだった。



 ―「まったく…これだから変なことに巻き込まれたりするんだよ。世話がかかるなぁ。ホント」―


 ◇ ◇ ◇


 最初に目に映ったのは、天井。そして聞こえたのが、アラームの音。

 時計に目をやると7時を指していた。

 目をこすりながら体を起こす。

 ここは俺の部屋だ。

 昨日倒れたのは家の近所。ならどうやってここまで来たのだろうか。


 いや、それも深く考えないことにする。今はそんな事より学校だ。俺は制服に着替え、リビングへ降りていく。


 ◇ ◇ ◇


 うちのリビングのソファーにはなぜか凪沙が居た。

 何故二日連続で俺の家にいるのか?

 そんな疑問をそこそこに時間が時間なので凪沙を起こすことにする。

 ソファに寝ている凪沙はすやすやと可愛く、幸せそうに寝ていた。よだれを垂らしながら。よだれを垂らしながら!!!

(この寝顔は天使!だが、俺のお気に入りのソファーによだれを垂らしたことは許さん!)

 と言う訳で、テレビを大音量で流し、起こしてやることにした。

 え?けが人に対しての仕打ちが酷いって?

 大丈夫。気絶してただけだから。


 取り敢えず、行方不明になりがちランキングTOP3のリモコンを探す。



 5分後。


「あ…あった…」

 俺はこの瞬間、次の休日とか暇なときに部屋、と言うか家の整理をしよう。と固く決意した。

 別に具体的な日時が決められてないのは、やりたく無いからとか、整理するのが苦手とか、浪費家なのに物は捨てられない典型的なごみ屋敷のあるじ的な性格の所為じゃない。


 ピッ


 今どき、ピッ、っと音を立てるリモコンなぞあるのだろうか?そんな作者の疑問は本編から逸脱した内容の為に消される運命にあった。

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これはきっと後書き

 先ずこれは、東方の二次創作として構想していた作品の為ちょっと色々設定があれですが気にしないで下さい。

 キャラ名とかから連想ゲームしたらきっと誰かわかってしまうと思います。

 実はこれ僕が学校とかの作文以外で初めて書いた物語なのです。公開は二作目ですが僕の処女作なのです。

 だから可愛がってあげてください。

 これを読むと中学時代に東方にはまりまったりさんにはまり、茶番劇者を目指していたと言う過去を鮮明に昨日の事のように思い出せます。(言うて数年前だけど)


 と言う訳で、「討伐対象」の方も更新しますがこちらもちょくちょく更新出来たらな、と思います。

 でもあくまでメインは「弱討」の方ですのでこちらの投稿は少なめ。

 弱討の執筆に飽きたらぼちぼち息抜きに昔を思い出しながら続きを書いてストックなしで投降!みたいなことになると思います。

 それと、この作品が更新された週は「弱討」の更新はありません。(ストックを守る的な意味で)そこらへんも許してもらえたらなと思います。


 最後にこの作品は三部構想です。

 1つ目がこの作品

 2つ目は過去(この作品の事件を紐解く鍵)

 3つ目がこの作品で起こる大きな事件の解決後といった流れです。

 そして蛇足の4部目があるかもしれません。

 一々部毎にタイトルを変えて別小説として出します。

 そういうちょっと捻った書き方がかっこいいと思っていた時期なのです。

 分かりづらいかと思いますがどうか許してください。


 てことで来週はたぶん「弱討ち」更新です。

 またお会いしましょう。

 ちょっとおセンチな気分のいこま。

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