第七十五話 戦場
「ここからは、戦場です」
車の中で、運転手のセバスチャンが告げた。
お城の中では彼にもかなりお世話になった。
「怪物共の数は多数、被害も甚大。町一つぶんくらいの範囲が、襲撃されています」
「……」
「私もどこまで……」
ピピピピピ!!!
車のアラームが鳴った。
「どうやら怪物が近くにいるようです」
車が静かに止まる。
「私がお送りできるのはここまでです。どうか、ご武運を」
「はい、ありがとうございました」
僕達は、車を降りる。
ここは山の中。
山の中に行ってばかりだな。
人気のない場所は、秘密を隠すのにちょうどいいからね。
ただ、視界は開けている。
なぜなら、怪物が通ったせいで木々が根こそぎなぎ倒されているから。
「キーーン」
さっそくお出迎えだ。
オオカミ風の怪物が、僕達を取り囲んだ。
群れで僕達を襲う気らしい。
「キン!!!」
数匹の怪物が同時に吠え、とびかかって来た。
「真、正面ですわ!」
「了解!」
真くんが正面に踏み込み、斬る。
鮮血が飛び散った。
「留美子は右上!」
「あいよ!」
留美子が斜め上にバットを振り抜くと、オオカミが弾き飛ばされる。
「太一は左下!」
「おっけー!」
太一くんが足元を殴ると、噛みつく寸前のオオカミが叩き潰された。
「ええと、オーくんは……」
「あうう!!」
最後の一匹は、大きくジャンプしてきた。
それをオーくんが打ち落とす。
素晴らしい。
有栖の指示で、確実に仕留める。
あまりの数に、最後は間に合わなかったけど、それでも大丈夫なくらい僕達は強い。
これなら……。
「うおっ!!!」
僕がしゃがむと、なにかが背中をかすった。
「上ですわ!」
「くらえ!!」
あ、危なかった……。
上から鳥が狙っていたなんて。
けど、僕の回避スキルも絶好調だな。
……願わくば、なんとかこれをものにしたいのだが。
「ここにいたら、いつまでも狙われる。早く、目的地に急ぐぞ!!」
目指すは、大きな電波塔。
あれが研究所の目印だ。
――――――――――
何度か怪物の襲撃を撃退しながら、たどり着いた。
電波塔に近づくと、その周りには武装している軍隊みたいな人達があわただしく行き来している。
みんな手には武器を持っている。
「すみません!!!!」
「ああ!? なんだよ、忙しいんだよっ!!!」
それは見てわかるのだが、こちらも訊かねばわからない。
「作戦本部はどこですか!?」
「それなら、あの緑のテントだ!」
「ありがとうございます!!」
一際大きいテントに入るのだった。
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