九章 「突入作戦」
第六十話 出発
「皆さま、おはようございます」
「ふぁ……」
あのパーティーから何日くらい経っただろうか。
僕も少しずつ、戦いのセンスを磨いていた。
そんなある朝。
Xから呼び出しが来た。
あれ以来、僕達に自由に訓練をするように命じていたXからだ。
つまり……。
「よく聞きなさい。一度しか言わないわよ」
一度しか。
大事なことは何度も言ってほしい。
けど、そんな時間もないのだろう。
「あなた達の出番が来たのよ」
半分寝ぼけている頭で、なんとか言われたことを整理しようとする。
僕達の……出番?
考える暇もなく、話は進んでいく。
「昨日、作戦を開始したわ」
「作戦?」
「この前言ったでしょう? 奴らの本拠地を襲う作戦よ」
「あぁ……」
本拠地を襲う……作戦かぁ……。
「……って、ええ!? もう!?」
あまりの衝撃に目が覚めた。
近々とは言っていたが、いくらなんでも早すぎる。
「不穏な動きがあったから、仕方ないの」
今じゃなきゃ、だめだったんだろうなぁ……。
他ならぬXの判断だ。
「それで、私直属の制圧部隊が組織に強行突入したまではよかったんだけど……」
おわぁ、すげえ。
映画の中みたいなことやってんじゃん。
「あいつら、私に捕まるくらいなら死んでやるとでも思ったのか、やけくそになって施設中の檻を開けやがったわ」
「檻って……」
「お察しのとおり。おかげで中は、魑魅魍魎であふれていて、とてもじゃないけど人間が近づけない死の鳥籠になっているわ。幸か不幸か、怪物共は外には出たがらないみたいだから、全て中にいるわよ」
「……」
これまでとは違い、「いるかもしれない」ではなく、「いる」なんだな……。
しかも、うじゃうじゃと。
聞いただけで怖くて足がすくんでしまう。
「これが目標の建物の地図よ」
一枚の地図が僕に渡された。
「あなた達の目的はただ一つ。赤い印が付いている部屋に行き、金庫の中にある重要文書を回収すること」
おぉ、スパイみたい。
でも、ものすごく大変だよな。
この地図見ただけでも、中が凄まじい迷路みたいになっているのがわかる。
「さあ、わかったらさっさと行きなさい! ことは一刻を争うわ!」
「は、はい!」
僕は寝ぼけているみんなの背中を押しながら、部屋を出る。
最後に、Xが彼女なりの激励の言葉をかけてくれた。
「私は戻ってこいとは言わないわ。なぜなら、きっと戻ってくると信じているから。せいぜい今夜のごちそうでも考えておくことね!」
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