第五十九話 集結
「それで、どうして彼らがここにいるんですか?」
まさか、僕を喜ばせるためだけが理由ではないだろう。
「あら、不満でした?」
「いえ、その……嬉しいですけど。わざわざ彼らがここに来る理由が気になって」
「さすが研究者ね。些細なことにも疑問を持つ」
些細かな?
「いいわ、教えてあげる」
Xは僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「近々、大規模な調査を実施しようと思っているの」
大規模な調査?
「前みたいに、廃坑や無人島に行くんですか?」
大きな怪物とも戦うことになるかな。
「いえ、それで倒せるのは末端だけよ。ですので、元を絶つことにしたの」
「元……ですか?」
「ええ。つまり、奴らの本部を襲うのよ」
「ええ!?」
奴らって、浄化の会のことだよな。
組織ごと潰しにいくのか……。
「とはいえ、奴らは日本中に支部がある。今回潰すのは、あの怪物を取り扱っているところよ」
「なるほど……」
だとしても、驚きだ。
世界滅亡をたくらんでる奴らのところに乗り込むだなんて。
「もし奴らが怪物を出してきたときに迅速に対応できるように、あなた達の力が必要だから集めたのよ」
「……」
人対人なら僕らの出る幕はないのかもしれないが、対怪物となるとこっちの方がスペシャリストってことかな?
「今やあなたも能力者。テストの結果、あなたが一般人だとわかれば向こうに送り返して、地道に研究を続けてもらう予定だったんですけど……」
そうはならずに……。
「私の見込んだ通り、あなたは能力者だった。だから、あなた達六人はこれから私直属の手ごま……かわいい部下となり、働くのよ」
僕が能力者であることを予想してたなんて、やはりこの人はすごいなぁ。
てか、今また不穏なワードが……。
「いいわね? 作戦の日は近いわ。それまで、せいぜい準備しておくことよ」
と、ここまでシリアスムードだったが、一旦話が途切れた。
その隙に、真くんが話しかけてくれた。
「鈴木さん、僕驚きましたよ。まさか鈴木さんも能力者だったなんて」
「あはは……。僕もまだ信じられないな」
まだ意識して使えるようにはなってないし。
「どうりで僕が初めて鈴木さんと会ったとき、見えてたんですね」
……思い返すと、そうだな。
あのときも、きっと無意識に感じていたのだろうな。
「そのわりには、怪物の住む山の中に入って襲われてましたわね」
「そんなことも……あったなぁ」
あれは本当に死ぬかと思った。
有栖が助けに来てくれてよかった。
「でも、どれがおいしいかはわからないんだよなー。かわいそう」
むしろそれがわかるのは味覚が強化されている君だけだぞ、太一くん。
「ったく、わかるんならおいしいもん持ってうろうろすんなよ。それもあたしの縄張りで」
「それは……ごめんね」
ドーナッツ持って歩いてたら襲われたよね。
あのときは留美子がいなかったら、ドーナツごと食われてたよ……。
「うむむ! あむ!」
オーくんは、僕のことなんてガン無視でごちそうを食べてる。
うん、見ていて気持ちのいい食いっぷりだ。
「鈴木さんの能力って、具体的にはどんなのなんですか?」
「僕は……自分でもまだよくわからないんだけど、触覚で相手の動きがわかるみたいだよ」
「へー、じゃあ……」
「いてっ」
真くんが突然僕を小突いた。
「もー! いきなりなにするんだよ」
「あら? わからないんですの?」
「う~ん、それがまだうまく扱えなくてさー……。わかるときとわからないときがあるんだ」
ここはまだ、修業次第だな。
と思っていると、Xが割って入ってきた。
「それはもしかしたら、嗅覚が完全にないわけではないからかもしれませんね」
あー……。
言われてみれば、そうかもしれない。
僕の嗅覚は、少しは機能しているし。
「あるいは、年齢も関係していそうよ。だってほら、あなただけ成人しているもの」
「たしかに……」
僕だけ歳が離れてるんだよな。
それでも、まだ20代前半だけど。
この力は、子供のときに一番強くなるのかも。
「とにかく。できるだけその力を制御できるようにするのよ」
「はい、わかりました」
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