第五十五話 寂しさ
「はぁ〜〜〜〜」
自室に入った僕は、ため息をついてベッドに倒れ込んだ。
「疲れた……」
ここに来て、Xさんと少しお話して、お城の中を簡単に見学して、一日が終わった。
精神的にも、肉体的にも、疲れが溜まってる。
「今日から、ここで暮らすのか〜」
僕はぐるりと部屋を見回す。
前は研究所の隣りにある寮に住んでいたが、今はお城の一室だ。
夢の(?)お城暮らし。
望んでいたわけでもないんだがな。
不必要にでかいベッド(家族で寝てもスペース余りそう)があるし、姿見も金色に輝いている。
こんなまぶしく輝く部屋で寝れるだろうか。
「あ……」
この部屋にはバルコニーもあるんだ。
外へ続くガラスドアがある。
立ち上がって、外へ出てみる。
「わぁ……!」
そこには、きれいな景色が広がっていた。
山に建っているし、そこそこの高さに部屋があるので、窓からは町が一望できる。
麓には大小の家が並んでいて、ここが日本の都市であることを感じさせる。
このお城を除けば。
「気持ちいいな」
町では味わえない新鮮な空気だ。
すっきりする。
ただ……。
「はぁ……」
やっぱり心は晴れない。
本当に、明日から僕はどうしたらいいんだ。
こんなことになるなんて、思ってなかったよ。
楽しみな気持ちよりも、不安の方が勝ってしまう。
「なにするんだろなぁ」
見当もつかない。
前と同じ仕事だといいな。
でも、派手にやらかしたから担当を外されてるかな?
仮にまたあの怪物の研究になったとしても、今度はあのXことクスさんの指示に従わなきゃいけないよな。
もう、自由に外を歩き回ることも……できないのかな。
「……」
寂しくなってきちゃった。
だって、ここには僕だけだもの。
いつも賑やかな彼らはいないんだ。
もう楽しく笑いあうこともできないんだ。
せっかく、仲良くなれたと思ったのに。
「あ、そうだ」
社会科見学の感想。
書いてもらったけど、まだ見てなかったな。引っ越しで忙しかったから。
僕はキャリーケースを開き、大量の荷物の中からそれを発掘する。
順番に、一人ずつ読んでいく。
「スリルがある迷路に、怪物まで! すごく楽しいアトラクションでした!!」
まず言わせてもらうと、あれはアトラクションではない。
それに、怪物も想定外だったんだ。
あと、この件も怒られたな。
「オオカミがかわいかったですわ」
……普通の動物園の感想か?
おい、そうじゃないだろう。
あと、あれ言うほどかわいかったか?
怖かったけどな……。
「寿司がうまかった!!」
おかしいな。
これは社会科見学の感想なんだが……まあ、間違ってはないか。
「血の匂いがそこら中でしたから、闘志が湧いてきたぜ」
物騒!!!!
死人が出る危険な職場ではあるけども!!
「で、最後はオーくんだが……」
当然読めない……と思ったら、違う。
これ、絵が描いてあるな。
真ん中の赤いのは、巨大ロボか。
周りにいる六人は、僕達だね
なんだか楽しそうだな。
「僕まで……入ってるんだな」
仲間として認められてるみたいだ。
「あぁ、もう、だめだな……」
つい涙が出てきてしまった。
職場が変わり、仲のいい人とも離れて、情緒が不安定になってるんだ。
「また、会いたいな……」
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