第五十六話 テスト
「あなたには、今日から実験に付き合ってもらいます」
と言われて連れてこられたのは、お城の地下。
なんと地下には、あそこと同じような研究所が広がっていた。
「ここに入りなさい。テストをするから」
テスト?
なんだろう。
疑問に思いながらも、重い扉を押して体育館のように大きな部屋に入った。
直後、扉は即座に閉ざされ、鍵までかけられた。
「え、あの……本当になにをするんですか?」
こんな何もない部屋に閉じ込めるなんて、なんのテストだ?
普通に監禁されただけなんだが?
「スタートよ!」
天井のスピーカーがそう告げる。
それと同時に、目の前の壁が開いた。
中には見覚えのある鉄格子が見える。
大抵こういう檻の中には危険な獣が入っている。
が、今はなにも見えない。
空なのだろうか。
と、希望的観測を抱いてみるが、うすうす気づいてはいる。
「あの檻の中には、あなたがよく知っているものがいるわ」
「……」
「五分間耐えたら、そこから出してあげる」
「え!?」
耐えたら……とは!?
ま、まさかとは思うが……。
「オープン!!」
機械音と共に、鉄格子が下に下がっていく。
中にいるなにものかが解き放たれた……はず。
「あ、あの!! 無理です、出してください!!」
「泣いても無駄ですよ。助けは出しませんから」
「はぁ!?」
無茶苦茶だ。
あの人は、僕を殺す気なんだ。
僕はこの実験室で、無残に殺されて……。
「たまるかよ……!」
絶望を通り越して、腹が立ってきた。
涙は昨日流したから、もう枯れている。
それよりも、ここを出てXをぶん殴ってやりたくてたまらなかった。
それに、ここで死んだらみんなに会えない。
なにがなんでも僕は生きるん……。
「だっっ!?」
気配。
それは、冷たくておぞましいものだった。
僕の背中を刺し、全身を凍り付かせる。
無意識に、体が動いた。動かされた。
「っ!!」
裂けた。
お気に入りのTシャツが。
もしあのまま突っ立っていたら、腹が裂けて内臓が飛び出ていただろう。
「……」
向こうはとっくに戦う気らしい。
久しぶりの人間だとでも思っているのか?
「……」
意識を集中しろ。
できる。
できるさ。
僕ならできら。
彼らのように、感覚を研ぎ澄ませ。
見えないものが、感じられないものがわかるはず。
「来るっ!!」
僕はとっさに右へ跳ぶ。
その瞬間、またもやシャツの端が破れた。
が、今度も攻撃を避けられたようだ。
「……」
戦いの最中。
考え事をしている場合ではないのだが、一つの疑問が浮かぶ。
「……っ!」
僕はなぜ、奴の動きがわかるんだ?
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