第三十七話 上陸
「じょうりーーくってうわーーー!!」
「おっと! 気を付けろよ、太一」
船から飛び降りたはいいが、砂に足を取られて倒れかける太一くん。
それをすかさず支えるのが留美子だ。
本当にいいコンビだこと。
「えへへ、ごめんごめん」
僕達は砂浜に降り立った。
ちなみに、今回も捕獲部隊の人達と一緒だ。
「またよろしくお願いします」
「おう!」
隊長は元気に返事をしてくれる。
そして、砂浜で遊んでいる二人を眺めて、こう言った。
「それにしても、今回の二人はキャラが濃いな」
「……」
改めて彼らを見て、僕もそう思った。
片方はまだ小学生くらいの子供だが、この前開発したパワードスーツに身を包んでいるので、ゴツイ見た目だ。
そして、その隣にいるのは釘バットを担いだ奇抜な不良少女。
おそらくこの二人を見失うことはなさそうだ。
見た目が派手だからね。
というか、僕と彼らははぐれちゃいけない。
この二人から離れたら、なんの能力もない僕はいつ死んでもおかしくないから。
「にしても、ここは臭いなぁ……」
彼女は鼻をつまんだ。
僕はなんともないんだけどな。
「俺も、なんていうか、あいつらの家って感じがする」
それはそうかもな。
人がいないこの島は格好の住処だ。
あの廃坑のように、大物が潜んでいる可能性もある。
「てか、これってよぉ……」
「どうしたんだ、留美子?」
「やっぱそうだよね、留美姉ちゃん」
二人そろって、足元の砂を睨んでいる。
なにかここに……。
「「おらぁ!!」」
「うわっ!!」
二人はバットと鉄の拳を目にも止まらぬスピードで、砂に突き立てた。
砂がぶわっと舞い、視界が遮られる。
「キイイーーン!!」
声だ。
怪物の声がした。
「ごほっごほっ!」
危うく砂が気管に入りかけた。
二人はここになにがあると……。
「仕留めたぞ」
「ほら、おいしそうでしょ?」
太一くんは、砂に擬態するような茶色の巨大な蟹を僕達に見せた。
「こ、これがこの下に?」
「ああ、そうだぜ。もしあたしらがあと一歩違うところに足を置いていたら、このはさみで真っ二つだったろうな」
僕はそれを想像して、ぞっとした。
やはり、ここは侮れない。
けれど、少しホッとした。
なぜなら。
「頼もしい味方だな」
「ええ、隊長……」
彼らなら、怪物にも立ち向かえる。
不安と期待が入り混じる目で二人を見つめる僕。
一方彼は呑気にはさみを……。
「待て待て待て!! ここで解体するな!!」
「えー、食っちゃだめなのー?」
不服そうに頬を膨らませて僕を見る太一くんと、その後ろでさらに怖い顔で威圧してくる留美子。
「食っ……」
ていいかは先輩に許可取らないといけないし、たぶんダメだが。
「とりあえず研究のために持って帰る。食べるのはその後だ」
「ぶーーー」
「この後の頑張り次第では、食べていい……かも(小声)……と思うから、ほら先に行くぞ!!」
「わーーい!!!」
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