第三十八話 跡

「今回の目的は、島の中心部の調査だ」


「中心部?」


 改めて衛星写真を確認する。

 中心ってことは、この大きな山辺りか。


「外周はすでに調査が完了している、だが中心になにがあるかはまだわかっていない。その一因は……」


「なにかとんでもないやつがいるからですか?」


「おそらく。会ってみないことにはわからんが、先に来た調査隊は全滅している。相当手ごわい相手だろうな」


「……」


 全滅……。

 それを聞いて、僕はゴクリと唾を飲んだ。

 緊張する。


「道は……どうするかな。このまま中心に向かってもいいのだが、なにかいい案はあるかな?」


「はい!」


 太一くんが手を上げた。

 彼が作戦について何かを言うのは珍しいな。


「お、なんだ? 言ってみろ」


「今進んでる方、あいつらが通った跡があるよ」


「え?」


 通った跡が?


「ほら、そこの木を見てよ。変な傷がついてるでしょ?」


 彼の指さした木には、たしかに切り傷がついている。

 僕の頭より高い位置にあるので、気づかなかったな。

 これも、彼が怪物についてよく知っているからわかったことなのだろうかか。


「このまま進むと、出会っちゃうけどいいの?」


「……いや、やめておこう」


 隊長は首を横に振る。

 僕だって出会いたくない。


「今回は中心部の調査が目的だ。いちいち他の怪物に構っていたらきりがない」


 それはそうだ。

 できれば会わずに行きたいところだ。


「で、どっちが一番安全かわかるか?」


「ん~、こっちが一番安全かもな。臭いも薄いしよ」


「了解だ」


 やはり、二人がいてよかった。

 戦闘のみならず、細かいサポートもできるからね。


――――――――――


「はぁ……はぁ……」


 オフィスワークばかりの僕には、辛いぜ。

 足元は柔らかい泥だし、草木も生えてる。

 それに、この気温。

 熱帯って感じで、むわっと来る。

 汗が止まらない。


「そろそろ……休憩……」


「おっと? ありゃあ、なんだ?」


「へ?」


 下を向いていた僕は、顔を上げる。

 すると、目の前に草木に覆われた白い建物が見えた。

 豆腐みたいに四角くて、小さい。

 が、小屋ではないな。

 しっかりとした頑丈な建物だ。


「た、隊長。ここは無人島では?」


「そのはずだが……。妙だな?」


 なんで建物があるんだ?

 以前、あるいは今も誰かが住んでいる?


「どうします? 入ります?」


「主目的ではないのだが……、これも調査の一環として入ってみるか」


 そうして、僕らは建物に入ることにした。

 僕としては、休憩できるのでありがたった。

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