六章 「第二次殲滅作戦」
第三十六話 無人島
「うわーー!! すげーーー!! 海だー!!」
「おいおい、あんまり乗り出すと落っこちちまうぜ」
ここは太平洋のど真ん中とまではいかないが、結構沖だろうな。
港を出たのがもう一時間ほど前だ。
海の景色も飽きてきて、船酔いしかけてきた。
「そろそろ目的地に着くんだから、準備しとけよー」
僕と太一くん、そして留美子は船に乗って無人島へバカンス……もとい怪物討伐に向かっている。
なんでも、この前の廃坑のときのように、巨大な怪物の存在が確認されたらしい。
「……」
最初はあくまでも噂程度の情報だった。
ほら、廃坑にはメモが落ちていただろ?
あんな風に、怪物の存在を示唆する目撃情報がいくつかあったんだ。
今回の無人島は、とあるネットの掲示板で「帰らずの島」と言われていた。
ここに乗り込んだ奴は、二度と帰ってこれないらしい。
その掲示板でも、勇気のある(言い換えれば無謀な)若者が何人も島に向かっているが、全員連絡が取れなくなっている。
「まあ……」
僕は最初にこの噂を耳にした時、嘘臭いと思った。
だって、本当に「帰らずの島」ならば、なぜそれを知る者がいる?
帰れないと知ったときにはもう手遅れ、帰れないはずだろう。
無人島だが電波が通じたから書き込みをした可能性もあるけどね。
「……で」
不思議なことが起きたら、僕達研究機関が島の調査をすることになる。
最初は僕の担当じゃなかったんだよ?
だって、あの怪物が関わっているとは断定できなかったから。
例えば、島の周りはただ海流が強くて泳ごうがイカダを漕ごうが必ず戻ってしまうだけなら、そもそも僕達の出る幕じゃない。普通に危ない島として、一般のメディアに公表しても問題ない。
そして、仮にこの研究機関の専門だったとしても、例えば島自体が一度踏み込んだ者を逃さない「生きている島」だったら、新しい担当部署ができるはず。
でも、何度か調査員を送り込む内に、僕の専門である不可視の怪物がこの島に住んでいることがわかったから、送られたってわけ。
「どんな旨いやつがいるかな〜?」
「かなり暑くなってきたし、フルーツもありそうだな」
僕が真面目にここまでの経緯を思い返している間も、楽しそうにグルメの話をしている。
まあ、変に緊張するよりはいいんだけど。
ここらへんが、真くんや有栖と同じで、若い少年少女らしいな。
「おっ、あれは?」
ついに目的地が見えてきた。
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