第三十四話 保護
「ええ? 仲間になってくれるの?」
「……気が変わったんだよ」
次の日、彼女はいつもの公園で僕を待っていた。
そして、こんなことを言い出したのだ。
いったいなにが彼女を動かしたのか。
「昨日の坊主いただろ?」
「あー、太一くんのことか」
「あんな小さなやつもいるんなら、話は別だ。お前らだけに任せとけねぇ」
「……」
なるほど?
つまり、彼女は僕達大人と一緒に協力する気はないが、子供は守るつもりなのか。
とことん優しいんだな。
「お前、勘違いすんなよ?」
「え、なにを?」
「あたしが……子供が好きってわけじゃないんだからな」
初めて彼女が照れている姿を見た。
わかりやすい……。
つまり、ショタコンってことなのかも。
「ほら、さっさと案内しろよ」
「あ、ああ」
――――――――――
「わー! 昨日のお姉さんだー!!」
戻ってくると、噂の太一くんが出迎えてくれた。
「元気にしてるか?」
「うん、とっても!」
うむ。
すごく仲がいいな。
昨日出会ったとは思えないほどだ。
これなら、この二人でコンビを組んでもらうこともできるだろうか。
「とりあえず……太一くん、ここの案内をしてやってくれ」
まだわからないことだらけだろうからな。
「わかった! お姉さん、こっちこっち!」
「ははっ、待てよ~」
太一くんに手を引かれて、まんざらでもなさそうな不良少女……留美子。
――――――――――
「ここが食堂だよ!!」
まだまだ続く施設見学ツアー。
「食堂……」
広い空間にテーブルと椅子がいくつも置かれている。
先日食べ比べをしたのもここだ。
「カレーにラーメン、カツ丼、天丼、ハンバーグに、ステーキに……」
とめどなくメニューが読み上げられる。
すべて記憶しているのだろうか。
「……」
「な~んでもあるんだよ!!」
味覚が鋭いだけあって、食への関心が高い太一。
しかし、留美子の方はうかない顔をしている。
「どうしたの、お姉さん?」
下から覗き込む。
彼女は、少しずつ話し始めた。
「……あたしさ、食事ってのはどうも……」
「ご飯がどうかしたの?」
「あんまり言いたくなかったんだがな、あたしは味がしないんだよ」
「ええ!?」
そう、彼女は味覚が欠けているのだ。
味がすべての太一には、衝撃的だった。
「なにを食っても、一緒さ。なんにも味がしねぇ」
「そ、そんなぁ!」
「だから、食事ってのは好きじゃねぇんだ。なにを食おうが一緒だからな」
「そんなことないよ!」
必死に言い返すが、これ以上の議論は無駄だと思ったのか彼女は歩き出す。
「わりぃわりぃ。次行こうぜ」
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