第三十一話 義務
「お前、わざとやってるのか?」
またまた先輩に報告しに行く。
これで四度目だ。
「え、いや、そういうわけでは……」
「それじゃあなんでお前の周りにはアブノーマルな人間ばっか集まってくるんだ」
「なんで……でしょうね」
偶然だと思うけど……。
ここまで連続だと、怪しくも思う。
「そういう体質なのか? それとも、お前の能力か?」
「僕のですか?」
僕は、至って普通なんだけどな。
彼らみたいに、特殊な能力は持っていない……はず。
「能力者を集める能力でも持ってるとしか思えないんだよ」
「……」
そう言われると……。
「解剖してやろうか」
「ひぃ! し、仕事行ってきます!」
――――――――――
研究所の一室で、目つきの鋭い彼女と向かい合う。
「あんた達は何者なんだよ?」
やっぱり怖い。
釘バットは防犯上の理由で預からせてもらったけど、それでもただならぬ気配が漂ってくる。
「ぼ、僕達は、あの怪物を調査している研究員でね」
「……」
「君のような、怪物が見えるちょっと特殊な人も調査してるんだ」
「それで、あたしが連れて来られたと」
「うん、まあ、そうだね」
「なんだか面白そうだから、少しくらいなら付き合ってやるわ」
「ありがとう」
太一くんみたいに暴れられる心配はなさそうだ。
僕は最初の質問をする。
「それじゃあ、名前を教えてくれるかな?」
「あたしは
神崎さんね。
「さっき公園で、なにをしてたの?」
「あたしの縄張りを奴らが狙ってたから、わからせたのさ」
「……」
縄張り……。
わからせた……。
「ここ一帯は、あたしが守ってんのさ。よそ者が来たらぶちのめす。それだけよ」
ここでいうよそ者って、あの怪物のことなのかな。
それとも、僕も入ってる…?
「じゃ、じゃあ! いつからその活動をやっているのかな?」
「昔からさ」
これは例のごとく、いつから見えるのかは覚えていないパターンか。
「この近所は、あたしが母さんから引き継いだ縄張りなわけ」
引き継いだ……。
となると、彼女の母も同じようなことをやっていたのだろうか。
怪物からあそこを守ったり。
「といっても、人は襲わないわよ?」
よかった……。
「あたしの家は、代々あいつらが見えるんだわ。だから、ここらを密かに守ってるんだ。みんなが安全に暮らせるようにね」
「なるほど……」
まるで正義のヒーローだな。
それなら、話が早い。
「ま、こんなところかな。もう話すことはないからあたしは……」
「待った!」
「ああん?」
「ぜ、ぜひとも僕達と共に戦ってくれないだろうか!!」
「……」
「もちろん、君が町を守るのを邪魔するつもりはない。むしろ、手助けを……」
「お断りだね」
「え?」
「この仕事は、代々一人でやってきてんだ。じゃあな」
「あ……」
僕は、引き留めることができなかった。
だって、彼女の背中からは信念を貫く思いを感じたから。
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