四章 「触れない彼が感じるもの」

第二十二話 次なる出会い

 ここはとある田舎の埠頭。

 いくつもの大きなコンテナが並んでいる港だ。

 そして、側には大きな倉庫も。

 よくドラマとかで怪しいお薬を取引しているような場所だ。


「いかにも出てきそうだな」


 人気がないこの場所になぜ来たのか。

 言わずもがなだ。

 あの怪物を調査するため。


「ここから、声が聞こえます」


 真くんが指したのは、大きく「3」と書かれている倉庫だ。

 鉄の扉は潮風で錆びつき、茶色くなっている。


「開けるぞ」


 ギギギ。


 扉を横にスライドさせると、鳥肌が立つような音が鳴り響く。


「うわっ!」


 中から数匹のコウモリが飛び出してきた。

 これは、普通のコウモリだ。

 真っ暗なここに巣でも作っていたのだろう。

 問題は、奴らも巣を作っているかもしれないこと。

 ほこりが積もっていて、しばらく誰も立ち入っていないことがわかる床に、足跡をつけていく。

 そこかしこにクモの巣もはっている。


「あそこの……コンテナの山から聞こえます」


 奥の奥。

 広い空間に、ポツンと取り残されたコンテナがいくつか積まれている。

 そこに、なにかが潜んでいるようだ。


「待ってくださいまし」


「どうした?」


「あそこの壊れた窓からコンテナまで、足跡かなにかが続いていますわ」


「……本当だ」


 言われてみると、ホコリの上になにかを引きずったような跡がある。

 やはり、ここにはなにかが住んでいる。


「どうするんですか?」


「あまり近づきすぎるのも……」


「ピュイーーーーン!!」


 ヘッドホンが唸る。

 すごく嫌な予感がした。


「なんだか、ヤバイ気がします」


「そ、そうだな。一旦逃げるか」


「ええ」


 僕達は、抜き足差し足で入口に戻……ろうとしたのだが。


「だめです。もう一体が、扉のところにいますわ」


 しまった。

 挟み撃ちされてしまった。


「どうします?」


「……」


 今日は僕と真くん、有栖しかいない。

 捕まえるなんて無理だし、かといって逃げるのも厳しいか。

 となると。


「真くん」


「わかりました」


 彼に頼らざるを得ない。


「有栖さん、敵はどんな奴ですか?」


「お、大きいクモですわ!」


 クモか。

 厄介だな。


「来ます! みんな下がって!」


 前方から、一匹のクモが僕らに向かって走ってくる。

 かなり早く、ゴーグルの映像もほとんど役に立たない。


「今ですわ!」


 有栖の声にあわせて、真くんが刀を振る。


 ズバッ!


 きれいな切断音が聞こえ、足が一本落ちた。


「よし!」


 喜ぶのも束の間、真くんは刀を投げ捨てた。


「な、なにをしてるんだい!?」


 この状況で戦闘を放棄するなんてありえない。

 すると、有栖が解説してくれる。


「糸が……糸にからめとられたんですわ!」


「……なんだって!?」


 そうか。

 相手はクモだ。

 そりゃあ、糸も出す。


「あ、す、鈴木さん!」


 丸腰になった彼は、僕に助けを求める。

 だが、僕はもう間に合わない。

 彼が食われるのを……。


「おらぁ!!!」


「キキキーーーーン!!」


 なんだ?

 聞き覚えのない声が聞こえ、怪物が叫んだ。


「あ、あれは?」


 さっそうと真くんの前に現れた謎の人影。


「へへへ、こいつは俺のもんだぜ」

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