第二十話 夢

「どうしたんだい?」


 僕は頼み事をしに、技術部の真土さんのところに訪ねた。


「僕……かっこいい武器が欲しいんです」


「ほう」


「あいつらを、ズバッーって倒せるような」


「へー」


 この人、興味なさそうだな。

 仕方ない。

 あまり乗り気ではないけど。


「僕の耳の秘密、教えますよ」


「え!?」


「ヘッドホンの改良に役立ててください」


「本当かい!?」


「その代わり、強い武器を作ってくださいね」


「もーちろんだ!」


――――――――――


 そしてできたのが……これ?


「あの、これっていつもの白杖じゃ」


「ノンノン。見た目はそうだが、中身は違う」


「中身?」


「この杖を素早く二回地面についてみな」


「はい……?」


 とりあえずやってみる。


 トントン。


「え、あれ?」


 使い慣れた白杖が、ずっしりと重くなった。


「今その杖は、刀になったのさ」


「刀?」


「イエース! しかも、なんでも斬れるっていうおまけ付きさ」


「な、なんでも!?」


「「設定した形に変形する金属」と「なんでも斬れる刀」、そして君の白杖をいい感じに合成したらできたんだ」


 なんだか、次々にヤバイ物質が出てきた……。

 それを合成って……。


「それ……いろいろと大丈夫なんですか?」


「ノープロブレム! 技術の進歩のためならば、なにをしてもいいと言われているからね」


「そ、それなら……」


「さあ、思う存分それで斬ってこい!!」


――――――――――


「ん……」


 夢を見ていた。

 あの刀を受け取ったときの。

 あれを貰った時、ものすごく嬉しかったんだ。

 ……あと、あの人に体を提供するのは二度とごめんだ。次は僕が武器人間に変えられるかもしれないから。


「……」


 ここは……どこだろう。

 たぶんまだ帰りのバス。

 ガタガタと小刻みに揺れている。

 いつのまにか眠っていた。


「……」


 今日はいろんなことがあったなぁ。

 初めての重要な任務。

 洞窟探検。

 そして、あの大きな怪物だ。

 僕だって初めて見た。


「……」


 けど、この刀のおかげで勝てたんだ。

 改めて、右手に握っていた白杖をぎゅっと握る。

 思えば、この杖は古くからの相棒だ。

 これからも。

 いつだって、僕を支えてくれる。


 ガタン!


 一際大きくバスが揺れた。

 僕の体が少し浮くが、柔らかい背もたれのおかげで……。


「……ん?」


 これ、本当に背もたれなのかな。

 やけに柔らかい。

 それに、よく聞くとすごく近くで心臓の音が聞こえる。


「むにゃむにゃ……ですわ……」


 有栖さんの寝言が、上から聞こえた。

 上?

 横ではなく?

 隣に座っていたのに?


 まさかこれって……。


 僕は真相に気づきかけたが、再び眠ることにした。

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