第十二話 協力

「それでは始めていくぞ」


「はい……!」


 今日の彼女は、いつものかわいいスカートではなく動きやすいジャージ姿だ。

 なぜなら、今から戦闘訓練だからだ。

 以前にも使ったホログラムで実戦を想定した戦いをする。


「頑張れ〜!」


 真くんも部屋の隅に座って応援してくれている。


「スタート!」


 僕はボタンを押す。

 すると、大きな熊みたいな獣が現れた。

 地味に種類にバリエーションあるよな。


「……」


 彼女はキョロキョロと辺りを見回し、突進してくる熊に気づいて避けようとする。


「あっ……!」


 しかし、いきなり体を動かしたので足が絡まってコケてしまった。


「ピピピピピ! 終了です!」


 あっという間に最初の訓練は終わってしまった。


「まあ……最初はそんなもんだ。次行くぞ」


「……はい」


――――――――――


「ああっ!」


「ピピピピピ! 終了です!」


 何度かやってみてわかったことがある。

 彼女は敵の位置を把握するのが得意じゃないな。

 見えるが、そもそも視界に入れられなければ意味がない。

 気づいたときには手遅れになっている。


「次、行きましょう!」


「う~ん……」


 やる気があるのはいいんだが。

 彼女を補助するなにかが……。


「あ、そうだ……」


 僕は真くんに声をかけた。


「真くーん! ちょっとこっち来てくれ!」


「なんですか?」


「彼女と一緒に訓練をしてみてくれ」


「え?」


――――――――――


「それじゃあ……スタート!」


 今回出てきたのは、大きなコンドルみたいなやつだ。

 背中合わせになっている二人の内最初に気づくのは、真くんだ。

 なにしろ怪物の声が聞こえるからね。

 そして、彼はすかさずその方向を指さした。

 すると、有栖もそちらを向き、怪物の姿を捉える。

 そう、これこそが連携プレーだ。

 真くんは音を頼りに大まかな位置は把握できるので、最初に敵を見つけてもらう。

 次に、敵の姿を詳しく補足できる有栖が敵の弱点や特徴を見つけ出す。

 ……改善点としては、戦闘中に有栖が真くんと意思疎通を取るのは難しいところか。

 スマホを使う暇はないからね。


「真上ですわ!」


 今回は入力が間に合ったようだ。

 それを聞いた真くんは、上に向かって白杖を突き出す。

 見事にそれが、怪物の頭に突き刺さった。


「ピピピピピ! 終了です!」


 初めて敵を倒して終了となる。


「おめでとう! よく倒せたね」


「有栖さんがいてくれたおかげです! ありがとうございます!」


「こちらこそ、真さんがいてくれたからですわ! 感謝しますわ!」


 ふふふ。

 二人はいいコンビになりそうだ。

 未来は明るいぞ。

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