第21話 オマケ 裏話 深夜の帰宅、妹の指摘

***


イオリはミカゲが帰宅するのを、今か今かと待ちわびていた。

結局、彼が家に帰ってきたのは日付が変わる直前だった。

築ウン十年のボロい平屋。

ここが斬島兄妹三人が暮らす家である。

ミカゲは頭から血を流し、真っ赤に染まっての帰宅だった。


「お兄ちゃん!!ミカゲ帰ってきたー!!」


そう叫んで、寝ていた長男を叩きおこした。


「あーあー、うっさい。

騒ぐな。

痛てーな、ちくしょう」


淡々とミカゲは言って、しまってある救急箱を取り出すと自分で処置を始めた。

そこに、叩き起こされた長男ヒヨリが現れる。


「おやまぁ、また随分と派手にやられたなぁ。

勝った?」


のんびりと驚くこともせず、ヒヨリは言った。

ミカゲもそれに返す。


「負けてねーよ」


その返答を受けて、ヤレヤレとヒヨリがアルコールと包帯を巻くのを手伝った。

手伝いながら、


「そういえば、イオリがなにか聞きたいことがあるってさ」


なんて言う。

ミカゲは、妹を見た。


「なんだよ?」


「あのさ、昼間、ミカゲと一緒にいた人さ」


「あー、冷泉か?」


「いや、名前は知らないけど。

冷泉っていうんだ、あの人。

ねぇ、まさかとは思うけど、その怪我あの人絡みだったりする??」


「アイツは関係ねーよ」


「じゃあ、あの人ってミカゲの彼女??」


「っ、ちげーよ」


「え?!違うの?!」


妹が予想以上の驚きを見せたので、ミカゲは怪訝そうにそちらを見た。

しかし、イオリは構わず叫んで指摘した。


「じゃあなんで、あの人、冷泉さんはミカゲの髪色と同じリボン付けてたの?!」


言われて、気づいた。


「……え??」


「気づいてなかった??」


そのやり取りを、ヒヨリが楽しそうに眺めている。

ミカゲの反応から、どうやら本当にリボンと自分の髪の色が同じ配色だったことに気づいていなかったようだ。


「気づけや!!」


イオリが突っ込んだ。


「た、たまたまだろ」


動揺を隠しきれず、ミカゲは言った。

しかし、イオリは追撃する。


「じゃあ聞くけど、今日って他の人も一緒だった?」


「は?」


「それとも冷泉さんとミカゲの二人っきり?」


「お前には関係ねーだろ!!」


「ふーん、二人っきりで出かけたんだ。

それで、わざわざ見える位置に冷泉さんは、髪をセットして束ねて、さらにミカゲの髪色と同じリボンをつけていた、と?

偶然なわけあるか!!

気づけや!!」


「うっせぇ!!」


「はいはい、二人とも夜も遅いし近所迷惑になるから、喧嘩はそこまで。

それと、ミカゲ」


ヒヨリに名前を呼ばれ、今度はそちらを見た。


「前に本貸してた子だろ?

今度、家にも連れておいで。

本棚見せてあげた方が選びやすいだろ?」


「うっせぇ!死ね!!」


なにもかも見抜かれていることに気づいて、ミカゲは吐き捨てた。

そして、自室に駆け込んだのだった。

バタンっと乱暴にドアをしめる。

それから、ズルズルとへたり混んだ。

その顔は熟れたリンゴのように赤くなっている。

くしゃくしゃと、ルリアがつけていたリボンと、同じ配色の髪を乱雑にかきむしった。


気恥しさと嬉しさが、ない混ぜになった感情に支配されて。

ミカゲはしばらく動くことが出来なかった。

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