エッセイと聞いてピンと浮かぶのは、さくらももこの「もものかんづめ」である。
ベタな選択だと思う。どこの小学校にも置いてあるだろうし、ももこ先生の類稀なワードセンスと脱力する世界観によって、何度笑いが込み上げたことか。
どうして取り上げたかというと、このエッセイ集と共通するものがあると思ったからだ。
この作品は読んだ限りダウナーである。たくさんのものを止めたり、叶わなかったり、失敗したりしている。
しかし、文中にはコンテンツに対する熱意や思いが込められていて、ちゃんと積み上げた上で諦めたんだなと思えるのだ。
だからこそ読んでて不思議と前向きになる。諦めることは全てを無為にすることでないと、教えてもらっているようだ。
面白いエッセイというのは、センスもさることながら、題材への熱意と眼差しを持った作品なのだろう。