第6話 継ぐ者
任務にあけくれ、様々な組織を傘下にして、リリース・アニマルズは裏社会で最も強大な組織へと成長した。
いよいよマザーAIのいるワールドセントラルタワーに攻め込もうという段階で、俺たちのボスが倒れた。
老体であることにくわえ長年の無理が祟ったのだ。
彼は死の間際、「バルバトスを後継者とする」といって俺に金色のペンダントを握らせて息を引き取った。
彼の遺品である金色のペンダントには一枚の写真が納まっていた。
そこに写っていたのは一人の青年。俺と同年代くらいだ。
「ボスは、あなたを自分の息子さんと重ねていたんだと思う」とリーは言った。
俺はペンダントを握りしめ、その場にいた幹部全員に向き直る。
「今日から……俺がボスだ!」
異を唱える者は、誰もいなかった。
ボスの意志を継ぎ、俺たちはワールドセントラルタワーに攻め込む。
最初の一手は街全体の停電。次が衛星をわざと街中に墜落させて混乱を誘う。混乱に乗じる形で傘下の組織が街中で暴れまわり警備が手薄になったタワーに俺たち本隊が突入する。
多くの戦友を失いつつもサイボーグ警備兵や武装ドローンを突破していく。
やがてタワーの最上階にたどり着いた頃には、俺もリーもぼろぼろになっていた。
タワーの最上階は異様な空間だった。これまでタワーの内部といえば無機質なまでに白く精錬された空間が広がっていた。
ところがこの部屋はどうだろう。
部屋全体がうっすらと灯る青い間接照明で照らされ、床には大量のケーブルが蛇のように横たわり、ごうんごうんと冷却用のラジエーターが動く音だけが響いてる。
薄暗くて、狭苦しくて、寂しい。
ここが世界の管理者の部屋。
ここが……世界の中心だっていうのか。
「ミア!」
密集したケーブルの中央にカプセルをみつけ駆け寄る。
丸窓の向こうに眠っているミアが見えた。
数年ぶりにみた妹の顔に涙が込み上げてくるも、いまは泣いている暇なんかない。
俺はカプセルの蓋にバールのようなものを突き刺し、こじ開けた。
すると白い蒸気が吹き出し、一気に部屋の気温が下がった。
白い息を吐きながら横たわるミアを抱きかかえる。
あとは連れ帰るだけ、そう思っているとリーが「待って!」と叫んだ。
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