第5話 バルバトス
レジスタンスの仲間になった俺は単なる出資者に収まるつもりもなく、毎日任務をこなした。
「次の任務は監視衛星のハッキングと最新型警備ロボのサンプルの奪取、それと貸した金を返さない無礼者の成敗。どれがいい?」
リーが前腕部に埋め込んだデバイスを操作しながらいった。
彼女は情報技術のエキスパート。通常、血中のナノマシン濃度は三パーセントから多くて五パーセントであるところを、彼女は四十パーセント越えている。
その上、自身の脳やナノマシンで処理しきれない雑多なタスクに関しては外部デバイスを利用する徹底ぶりだ。
完全な情報戦略特化型のサイボーグ。それがリー・シャウロンという女だった。
「一番危険なのはどれだ?」
「サンプルの奪取ね。ガチの戦闘になると思う」
「ならそれで」
「あなたって本当に命知らずよね。組まされてるわたしの身にもなってよ」
「悪い……でも俺、少しでも実践の経験を積みたくて」
「いいけどね、あなたがいつか直接妹さんを助けに行こうとしてるのはみんな知ってることだから。でもねバルバトス。あなたはわたしたちと心を通わせた唯一の一般人なのよ? いい? あなたは一般人なの。そこを忘れないで」
「俺、そのあだ名嫌いなんだけど」
バルバトスというのは、いつのまにかアニマルズの連中につけられたあだ名だ。
なんでも神話に出てくる悪魔が由来だそうで、その悪魔は動物と会話することができるのだという。
なんて、そういえば聞こえはいいけど、ようは血を見て気絶したり銃の扱いもからっきしな俺を馬鹿にする言葉だ。
「わたしたちはぴったりだと思ってるわよ。あなたの真面目さに感化されてる組員も多いし」
「ほんとかよ……」
「じゃなきゃ、わたしはいまごろこの組の資金を奪って海の向こうにとんずらしてるわ」
「おい」
「ふふ、冗談よ。でもね、あなたを慕ってるのは本当。わたしも、みんなもね」
「……そうかよ」
俺は拳銃をホルスターにしまい、次の任務へと赴いた。
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