外因的愛着障害

青柳蓮

case01

現場は異様な雰囲気に包まれていた。


ここは高級住宅街にそびえ立つタワーマンションの一室。俗に言うペントハウスだ。

下のフロアの住民から異臭がするとの連絡があり、何度か確認のために部屋を訪れたのだが応答がなかった。

持ち主の勤務先からも無断欠勤が続いているとの連絡があり、本日家宅捜索に至った。


結論から言おう。

1家3人の死体が滅多刺しにされた挙句、放置され腐敗していたのだ。


フロアに入った瞬間に強烈な異臭を感じ、屈強な大人の男たちでさえもうっと顔をしかめる。


エレベーターが止まるとすぐにドアがあり、自動でインターホンが鳴った。


ピンポーン


かけいさん、いらっしゃいませんか。」


待てど暮らせど応答はなく、その後も何度も呼び掛けたが変化が見られないためドアをこじ開けることになった。


「これICタイプのカードキーなんで時間かかりますよ。」


「仕方ありません。作業班を呼びますか。」


ため息をつきながらどこかへ電話をかける。


「これはもう仏っすね~」


銀髪でスラッとした体型で整った中性的な顔立ちの男は、わざとおちゃらけた口調でそういう。


「潜入捜査中だからと言ってその格好でくるのはいただけませんね。その向こう側が見える大きさの耳の穴はなんですか。許可した覚えはありませんよ。」


強面の強靭な肉体とは裏腹に、神経質そうな声でそう返したのは私の上司の雪村ゆきむらだ。


「すいませ~ん。周りのウケがこっちの方がよくって~。」


「すいませんではなく、すみませんでしょう。そして語尾は伸ばさなくて結構です。」


ジャジャジャジャーン


突然、大音量であの有名な運命が流れる。

どうやら作業班が到着したようだ。

ペントハウスへ向かうエレベーターは現在使用している1基のみなので、1度全員で下に降りることとなった。

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