第6話 ミャンマーの足枷
途中、すれ違いが難しい箇所は、ゴールデンロックから降りてくるトラックを待たなければならない。その間にトラック代、2000チャットを徴収された。支払い後は近隣の住民から、手荒い歓迎を受けた。要はトラックが出発するまで、しつこい押し売りに遭うのだ。
私に親切にして下さった夫妻は、ここで青マンゴーを買っていた。ミャンマーの人は青マンゴーに、塩と唐辛子をかけて食べる。私にもくれたのだが、私が辛さで悶えていたら、乗客はみんな笑っていた。この食べ方がミャンマースタイルだと笑う。決してうまいもんじゃない。
50分程度押し込められて、ようやゴールデンロックのあるチャイティーヨーに到着した。荷台から降りたとき、豚の気持ちがよく理解できた。きっと豚も尻も痛いに違いない。
ここから歩いてゲートへ向かう。参道がすぐ目の前にあったのですぐゲートまで行くことができた。だがゲートに行くまでの間に、外国人観光客の場合、チャイティーヨーの入域料を支払う、チェックポイントを通過しなければならない。
ミャンマーの場合、そのエリアごとに入域料が発生する。チャイティーヨーは1万チャットだった。参拝料と考えたら、なかなか気合の入った値段である。支払いの際、ノートに個人情報を記載しなきゃならない。ミャンマーの場合、まだまだ外国人が観光できる場所は国土の半分程度で、観光発展途上国でもある。このような入域料は、旅程において、あと3カ所ほど支払った。この国にとって入域料は貴重な収益なのだ。
山の上にあるゴールデンロック。涼しいかと思ったが、なかなかの暑さだった。緑が上品な色を讃えている。やはり観光するのは乾季の時期が一番だ。
この行程中、全く、雨に降られなかった。ミャンマー人は、ゴールデンロックを見
ながら、お弁当を広げてピクニックを楽しんでいた。
ゴールデンロックに向かって歩き出す。動線は出来上がっており、地図がいらない
くらい分かりやすい。サンダルはゲートで脱ぐ。窃盗が心配な人は持って歩けば良い
が、ミャンマーでも何度もサンダルを脱いだが、スリランカ同様、一度も盗まれなかった。おしゃれなサンダルを履いていなかったというのもあるが、手癖の悪い人もほとんどいないのだろう。さすが上座部佛教の国である。
ゲートから5分ほど歩いて、目の前に貫禄十分の金色の岩(ゴールデンロック)が現れた。岩が金色なのは、参拝客が岩に金箔を貼っていくからだ。
伝説によると、ゴールデンロックは仏陀の遺髪の上に載せられたらしい。だから落ちないと言われている。つまり、重力説を否定しているのだ。
金を見つめていると目がチカチカしてくる。少し外側に目を向けると、清々しいくらいの青が目に飛び込んできた。暑い国の青は、主張が強くて好きだ。
本来は金箔を買って、ゴールデンロックに貼るのが定番なのだが、女性は近づけない。だから私は、こうやって遠巻きに参拝するしかないのだ。たまに、金箔を買って、男性にお願いし貼ってもらう、という方法を使う女性もいるようだが、自分でできないなら意味ない、と捉えている私は、その後もどんなパゴダに行ってもやらなかった。
ミャンマー人の85%が信仰する上座部仏教は、男性のみが出家して徳を積むことができ、女性を『不浄』な存在としていることから、男性優位の思想である。
この旅においても、結構女性NGのパゴダ(寺)が存在した。このような思想が、この国の発展の足かせにの1つになっているような印象を持った。
ゴールデンロックに触れることができなくても、迫力は充分伝わってくる。約7mあると言う岩だ。下から見るとその迫力に恐怖すら覚える。ちなみに、向かい側にあったこの菩提樹を拝めるのも、男性限定だった。
ゴールデンロックの周辺は、色々と仏陀の像やゴールデンロックに似せた、ミニロックがあったりするも、ゴールデンロックに勝るインパクトはなく、写真に収めるのも躊躇うほどであった。つまりここは、ゴールデンロックしかない。ゴールデンロックだけ見るなら、60分の滞在で十分だ。
帰り道、参道のお土産屋や屋台を眺めながら、トラック乗り場へ戻ることにした。
トラック乗り場で気をつけなければならないのは、乗ってきた麓の町にある、キンプンバスターミナル行きを見つけなきゃいけないことだ。5台くらいトラックが停まっており、それぞれ行き先が異なる。何度も車掌に確認し、乗り込んだ。
帰りは山道を下りていく。たたでさえ乱暴な運転である。未舗装の道なのにもかかわらず、スピードの出し方も異常であった。崖から落ちるのではないかと、リュックの中に入れてあるお守りを何度握ったことだろう。当然だが、写真撮影どころではなかった。私は最後尾に座っていた。揺れとバウンドが酷く、サイドに座っていた地元民はリバースしていた。
下りも律儀に途中で止まり、トラック代2000チャットを徴収され、土産物売りに囲まれた。
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