コタツから逃げる話
@nihil_uro
第1話
パーティメンバー:
勇者(聖剣・エクスカリバー持ち) 主人公・操作キャラ
聖職者(回復担当)
魔法使い(中遠距離攻撃)
守護者(防御特化)
視界一面を吹雪が覆うその奥、薄らと魔王城の影が見える。
勇者「ついに…ここまで辿り着いたな!」
聖職者「ええ、あの魔王城がこんなに近くに見えるなんて」
魔法使い「聖剣・エクスカリバーも手に入れたし!」
守護者「あとはこの凍てつく大地を乗り越えれば…魔王が…!」
魔王を倒すべく生まれ、育てられた勇者。
魔王の放つ魔物からの被害を受けた土地を浄化して回った聖職者。
幼馴染の勇者の力になりたいと懸命に努力した魔法使い。
勇者を支える為、小さい頃から見守ってきた守護者。
勇者一向はこれまでの道のりを振り返り、それぞれの想いを胸に魔王討伐への決意を固くした。
守護者「しかしこう寒くては力を出し切れまい。"シールド展開"!寒さ耐性アップだ」
魔法使い「シールドありでも寒いわね〜重ねがけ出来ないの?」
聖職者「まあまあ、ここでそんなに魔力を消耗するのは良くないですよ」
勇者「そうだな!それに動けばすぐに温まるさ」
▽守護者 による バフ効果 で 寒さ耐性 がアップした!
▽寒さ による スリップダメージ がなくなった!
順調に歩みを進める勇者一向
勇者「魔王城のすぐ近くなのに魔物が少ないな…警戒を怠るなよ」
守護者「そうだな…ん?あれは…何だ?」
吹雪で霞む視界の中現れたのは立体的に立ち上がったカラフルな布、その上に木の板が乗った物体であった。
皆さんご存知、コタツである。
だがここはファンタジー世界、コタツの存在など勇者達は知り得ない。
魔法使い「何あれ…魔物?」
守護者「迂闊に近づくな!まずは俺が調べる」
恐る恐る近づく守護者。
コタツの反応はない。
守護者がコタツの布地を捲る。
コタツの反応はない。
どうやら木のテーブルに布をかけたもののようだ。
そこで守護者は気づく…暖かい。
この極寒の地においてほっと人心地つくような暖かさ、寒さで悴んだ指先が解れていくのを感じる。これは敵などではないだろう。
▽コタツ の 暖かさ で HP・MP が回復した!
守護者「おい、ここの中すごく暖かいぞ!一旦皆んなで温まって行こう。」
そうして守護者はコタツの中へと足を入れた。
魔法使い「えーそんなのより先に進んだ方が…」
勇者「そうだな、守護者のおかげで寒さダメージはないんだし」
得体の知れない物に足を入れたくないのか、魔法使いは先を促す。
守護者「分かった分かった、先を急ごう…
…?!」
守護者がコタツから足を抜こうとする。
が、抜けない。
布を捲って見ると足元から根が生えた様になっているではないか。
守護者「う、うわあああああぁぁぁぁぁ!!!」
勇者「守護者!早く出てこい!」
勇者が守護者をコタツから出そうと引っ張る。
初めこそコタツから出ようともがいていた守護者だが、だんだん力が抜けていくのを感じる。
コタツの包容力には抗えないのだ。
そのうちズルズルと上半身まで引き摺り込まれていった。
守護者「た…助けてくれ!俺は…勇者を…まも…」コタツの中に消える直前の守護者の顔は、安らかな寝顔に見えた…
▽守護者 は コタツ に 呑み込まれた!
勇者「しゅ…守護者…」
魔法使い「う…嘘でしょ…そんなのって…」
聖職者「…こんな魔物が…いたなんて…」
守護者を取り戻そうと攻撃をするもののコタツはびくともしない。
なんと聖剣・エクスカリバーすらも弾いた。
そしてじっと見ているだけでコタツへと導かれる様に入りたい気持ちになっていくのだ。
しばらくして現実を受け止め、コタツに背を向け魔王城へと歩を進める。
しばらくすると…
ザッザッという足音に混じってズル…ズル…という音が聞こえる。音のする方を振り向くと…
コタツがあった。
先ほどと同じかけ布の柄だ。着いてきたのだ。
"あれに呑まれてはいけない"
そう勇者一向の頭に警告が鳴り響く。
そこから勇者達の、コタツを避けながらの魔王・魔物の討伐が始まる─────
コタツから逃げる王道ファンタジーRPGです。
クリア条件:
追いかけてくるコタツから逃げつつ魔王を討伐する。
勇者はエクスカリバーを持っているので魔物は比較的簡単に倒せます。
コタツに関して:
魔王にHP・MP全回復するアイテムとして作られたが、動けなくなるデバフが大き過ぎて魔王城から締め出された。
可哀想ですね。
コタツは敵対している訳ではなく、コタツの存在意義として入ってくるものを全て優しく受け止めます。そして入ったもののHP・MPは即時全回復します。
バフが有能なのでコタツに対する攻撃は無効です。
ただその愛の深さ故に、入ったものを虜にしてしまいます。
魔王城の周りに魔物が少なかったのは魔物もこのコタツの中で癒されているからです。
コタツの中がどうなっているかって?
それは、入ってみないと分かりません。
きっと、心地よい暖かさに包まれて微睡を享受しているでしょうね。
おしまい
コタツから逃げる話 @nihil_uro
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