第15話 グラフと言う人
「ユーティアが素敵なご令嬢だという事、これは変わらない!」
丸め込まれたような気がしますが、三人がかりですから、私の意見は基本的に通りませんね……。
「皆様のいうグラフの指輪とは……教えていただけますでしょうか?」
これについてはグラフィル兄様がふう、と大仰にため息をつかれました。
「ユーティアに全く何も伝わっていないのはユリアデットの意志なのか、それともラング侯爵の怠慢なのか故意なのか……それは今となっては分からないが……」
グラフィル兄様が教えてくだったこの古ぼけた銀の指輪はとてもすさまじい力を持つものだったようです。
「リリアス家を興した人が大魔導士のグラフ・リリアスという女性だったそうだ。そのグラフ様は女性の身故にたくさんの苦労を重ねたらしい。どんな苦労をしたかは伝わっていないが、自分の子孫の女性たちの助けになるようにと力と願いを込めて作られた指輪がその「グラフの指輪」なんだ。
グラフの指輪の主は必ずグラフの末の娘と決まっていて、それ以外を主とは認めない。グラフの末の娘たちが幸せになるように力を尽くしてくれる指輪なんだ」
「この……指輪が……」
お母様が何を捨ててもこの指輪だけは持っていくようにと強く念を押された。なるほど、そんな力を持つ指輪だったとは……。本当に何の変哲もない銀の指輪なのですが、魔導士や魔法使いたちが見るとすぐに分かるほど、強い力を持っているそうです。グラフの末、指輪の主人が持っていれば常時凄い力を放っているそうなのです。
「これから帝国はどんどん栄えて行くよ。そしてこの帝国の基礎を作ったのはグラフだから、グラフの指輪の主はこの帝国では無敵の存在になれます。今まで動いていなかったシステムも全て作動し始めるはずですし」
「すげえ!無敵のユーティアだ!かっこいい!」
「黙りなさい!シュー!そんなお嬢様を貴方って子は!」
アンナ様はシューにげんこつを落としそうな勢いで叱っている……ふふ、なんだか素敵な親子。シューがあんなに素直なのはアンナ様がお近くにいて、シューを育てたからなんだわ……少し羨ましいです。
「私はね、シューの事もアンナ様の事もとても気に入っているんだ。もし、アンナ様があの阿呆の顔も見たくない!って言えば私の所で匿う予定だった。でもそれをしなかった……王家に対する責任と王妃様の要望だろう?アンナ様と正妃のローザンヌ様はとても仲が良いんだ。
ユーティアもなんとなくわかったと思うけれど、ローザンヌ様があの阿呆の手綱を取っているから帝国は平和なんだよね、ローザンヌ様には私も頭が上がらないよ」
やれやれ、と肩を竦めるグラフィル兄様。なるほど少し理解出来てきました。どこの王家も複雑なのですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます