太宰に取り憑かれた男
くろゆり
第1話 人間失格
恥の多い生涯を送ってきました。
齢22にして何度も自殺を繰り返し、女性を泣かせ続けるK
それを恥だと思うのは些か大人びているとも言えるし、逆にそれが未熟さとも言える。
周囲からの評判はほどほどで容姿も平均程度、年の割に発言や態度は落ち着いている一風変わった若者だった。
人付き合いを好むタイプではなく1人で食事を摂り読書をしていたりと群れるタイプではなかった。
少しミステリアスなKに興味を持つものは多く比較的女性にはモテた。
ただ、現代の太宰とは時代を違えただけで文才はあったのかもしれないが、全く世間に刺さらず、落ちていくだけの人に成り果てた。
きっと現代人のイメージ通りの太宰治になってしまったのだ
自殺未遂を繰り返し、心中をしては新しい女性を作り、愛人と最後は川に身を投げる。
取り憑かれたように女性に愛され心中をするが、幼少期から太宰を知っていたKはその運命に抗うために女性関係を絶ち続け、1人の女性を愛し続けていた。
それが崩壊したのは、16歳の頃だった。
完全に愛していた女性との縁が切れ、交際にこそ至っていなかったが幼少期のKにはとても精神的に辛い時間が訪れた。
誰でも良くなった、ただ自分がその場で満足できれば、
そして多くの女性に愛された。
本物かどうかなんて分からない。
その場凌ぎの延命でしかなかった。
何度も自殺未遂を繰り返すようになった。
芥川の死を知り太宰の生涯を知り、だんだん死ぬことが正しいと思うようになった。
薬を多量摂取したり、大量に出血したり、絞首によって命を落とそうともした。
だけど完全な死には到達しなかった。
死ぬ事にすら虚無感を感じるようになった。
感情が欠落していき、他人を愛す事でしか生きた心地を感じられない。
そのことに気付いたのは、多くの過ちを残した後だった。
そして今現在、、答えを見つけた。
たった1人のために命を捧げようと。
金銭的な意味でも物理的な意味でも無い、
とても簡単で簡潔で、最も美しい死
現代社会で多くの人が発症する病、メンヘラのための治療薬
承認欲求を満たすだけの愚者になろうと。
貴女を心から満たせるだけの愛情を持ってして足りなくなった欲求を全て満たすんだ。
現代の太宰なんて言われているがその実態は所詮周囲の評価でしかない。
あの太宰の時代にKが産まれていたならきっと相容れないにせよ、お互いを知り少しの支えになっていたのかもしれない。
人間失格、誰かに与える事でしか正常で居られない愚者に成り果てた。
人間として産まれ、人間である事を放棄したK
恥の多い生涯を送ってきました。
神様みたいないい子でした。
自分の感覚と周囲の見え方の違いはあれど、
太宰はきっとこう言いたかったのだろう。
私の生涯は間違いしかなかった。
でも、そんな人にすらなれない私を認めてくれる人は居た、
後戻りは出来ない、落ちた私は最愛と共に散る。
死ぬ時の太宰に恐怖は全くなくて、後悔と幸福に満ちて死んだのだろう。
Kはそう言って人生を貴女に捧げて、、太宰の後悔と偽物の幸福に満たされて孤独に死んだ。
太宰に取り憑かれた男 くろゆり @kuroyuri12
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